まずは2018年の台風21号による被害におきまして、醍醐寺復旧プロジェクトに応援購入を賜りましたこと心より御礼申し上げます。

この度、鶴田一郎先生の展覧会を醍醐寺にて開催することとなりました。

鶴田先生は「美人画」で広く知られていますが、仏画、琳派が先生の美人画の美意識の根源であります。最大の特徴である切れ長の目や流麗な指の表情などは仏像をお手本にされているのです。この度、実行委員会では鶴田先生の想いを乗せて「醍醐櫻曼荼羅」を奉納し後世に繋いでいく取組を始めました。

鶴田先生は鶴田流琳派、仏画を推し進めるにあたり、８年前にアトリエを京都に移しました。そしてこの度、醍醐寺とのご縁により先生が抱いた夢の一つが叶い、展覧会を開催させていただくこととなりました。醍醐寺霊宝館秋期特別展では、醍醐寺が所蔵する国宝美人仏画と美人画の第一人者である鶴田一郎画伯の絵画130点以上展示した「鶴田一郎～ミューズ達の祈り～」が開催されています。現代美人画家 鶴田一郎が祈りを込めて描いた美人画・仏画など100点と醍醐寺の寺宝・伝承文化財15万点の中から選りすぐりの美人仏画・仏像を公開。

若い頃の貴重な作品をはじめ、鶴田画伯が祈りを込めて描いた美人画や仏画、今回のために描かれた大作3点も展示され、大変見ごたえのあるものになっています。併せて、醍醐寺所蔵の快慶作の仏像、弥勒菩薩坐像(三宝院本尊)、水晶宝龕入り木造阿弥陀如来像、不動明王坐像の3点もご覧いただけます。

今回醍醐寺へ奉納する予定の作品は醍醐櫻曼荼羅（だいごさくらまんだら）といいます。今、季節は秋ですが、優しさの想像力で満開の醍醐の花見はいかがでしょうか。

技法：アクリル＋金泥＋和紙パネル
サイズ：150号

醍醐寺といえば桜、醍醐の花見に代表されるイメージが私にもありました。

京都にアトリエを移して間もない頃、夜桜の拝観に招かれました。その時、一番印象に残ったのは醍醐寺を象徴するような大きくて荘厳なたたずまいの一本の桜の古木でした。

数年後の台風で残念なことに、その桜も大きな被害を受けてしまいました。

今回、醍醐寺での展覧会のお話をいただき、醍醐寺に因んだ絵を描こうと思った時に、その桜の古木が想い出されたのです。

私が想像したのは、多くの人々が桜を愛で慈しむ心の中で仏の御手に懐かれた桜の古木は、満開と咲き誇り、銀河とともに宇宙の果てまで広がるように復活するのです。

人の心、人の想いは全宇宙と繋がっているのです。

私は、人が人である所以は創造する力（想像する力）があることだと思っています。

世界の調和・平和を想い、一緒に宇宙への祈りに参加をしていただきたい、より多くの方の意志が集まることが仏の意志が集まる事に繋がると思っています。

「醍醐櫻曼荼羅」に祈りを込め寄贈をさせて頂きたいと願っております。

2022年醍醐寺鶴田一郎秋期特別展実行委員会

▼総本山醍醐寺 （世界文化遺産）

開創８７４年真言宗醍醐派の総本山の寺院。山号は醍醐山（深雪山）。本尊は薬師如来。上醍醐の准胝堂（じゅんていどう）は、西国三十三所第11番札所で本尊は准胝観世音菩薩。京都市街の南東に広がる醍醐山（笠取山）に200万坪以上の広大な境内を持ち、国宝や重要文化財を含む約15万点の寺宝を所蔵する。豊臣秀吉により約1300人の女性を招待した日本史上最も豪華な花見「醍醐の花見」が行われた地としても知られている。「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されている。

▼鶴田一郎 （日本画家）

1954年 熊本県天草市に生まれる。幼少期から絵を描くのが好きで、多摩美術大学グラフィックデザイン科に進み、イラストレーターを目指す。プロとして描き始めた頃、西洋文化に影響を受け写実的な作品を描くが、自分が「日本人である」という意識が芽生え、琳派、仏教美術、浮世絵の「美人絵」など、日本独自の美意識に傾倒、その中でアールデコのヨーロッパ的要素と日本的要素が融合し、嫋やかで華やかな「鶴田流美人画」が生まれる。1987年〜11年間ノエビア化粧品広告に起用されCMアートの先駆者として人々を魅了。2014年活動拠点を京都に移し新たな技法と創造力を進化させている。半世紀に渡り国内のみならず海外での活動も続けている。

今回の展覧会の開催には、とても運命的なものを感じています。

私の想いはもとより、今に繋がる人達とのありがたいご縁や導きがあったからこその夢の実現だと思っています。

絵を描く事、美を創造する事、理想の世界を表現する事、そして一筆一筆想いを乗せて色を重ねてゆく事、その行為は祈りだと私は思っています。

祈りが仏に通じて、人々の心に優しく寄り添える展覧会になることを願っています。

鶴田一郎