ミシュラン二つ星獲得「江戸前鮨二鶴」。江戸の伝統を受継ぐ技を「今すぐ」体感せよ。

「砂糖を使わないなんて」信じられない

2016年。私、丸谷と「究極の鮨」の初めての出会いはとても衝撃的なものでした。
上記のコメントは5年大阪で修行したすし職人丸谷の当時の素直な感想です。

知人に紹介された「江戸前鮨二鶴」について調べていくと、どうやらシャリには砂糖が一切入ってないことがわかりました。「寿司は砂糖が入ってるから美味しい」とずっと思ってた自分からしたら衝撃の事実でした。

「砂糖を使わずに美味しいお寿司が出来るのか？」

半信半疑のなか、面接の時に食べさせてもらった時思いました。

「砂糖入ってないのに美味しいなぁ」

そして家に帰ってからも「なんか、今日の鮨ホンマに美味しかったなぁ」としみじみ。
後味が全然違う。そして1回目より2回目、2回目より3回目、だんだん良さがわかってくる。そしていつの間にか虜になっている自分。

3回目の時にようやく“鮨”と“寿司”の違いに気づきました。明らかに別物、別次元だと。

その衝撃を受けた後、江戸前鮨鮨二鶴での修行を始めました。
とある日、仕込み中に甘鯛の腹を裂いた時、また衝撃を受けます。

「内臓が綺麗すぎる」

まるで鮮度が違う。しかも種類が豊富で白身、青魚、エビ、イカなんでも揃う。
明らかに今までやってきた鮨屋とは違う。極め付けは種類の豊富さから
鮨一人前ができてしまうという点だ。

なぜこんなにも北九州の海は豊かなのか。

それは①産地市場であること②大陸棚③潮目が関係している。

①「産地市場」とは漁師が獲った魚を水揚げする市場です。

北九州の魚市場は「産地市場」で、深夜漁師が獲った魚を水揚げしたその場でセリにかけ、そのまま市場に卸し午前中には仕込みが出来ます。

一方で、私が以前修行していた大阪の魚市場は全国の産地市場でセリにかけられた魚を集め販売する「消費地市場」です。

良質な漁場の近くに位置する「産地市場」で仕入れた魚と大都会の「消費地市場」で仕入れた魚は24時間の鮮度差が生まれます。

②「大陸棚」とは水深200mまでの浅い海のことで、多くの魚や貝、エビなどが住む場所です。北九州周辺の海は広大な大陸棚があり、多くの魚が生息する「海の大都会」のような豊かな生態系が広がっています。

③「潮目」とは暖かい海流（暖流）と冷たい海流（寒流）が出会う好漁場の事を言います。「潮目」で獲れた魚は脂がのって美味しく育つのです。北九州は、対馬暖流と日本海の寒流がぶつかる場所にあり、良質な魚が育つ絶好の漁場となっています。

このように「潮目」と「大陸棚」を併せ持つ北九州は①鮮度の良い②種類豊富な魚を③脂ののった状態で仕入れる事が出来る最適な場所になります。

北九州は、美味しい鮨を握るのにぴったりな環境を持った魚の宝庫なのです。

「握り鮨」は今から約200年前の1829年に誕生したと言われています。 当時の江戸はパリやロンドンを凌ぐ世界有数の都市として発達し、その中でも日本橋は江戸随一の繁華街として賑わい江戸っ子を中心に歌舞伎、落語、浮世絵、相撲等など「粋」な庶民文化が勃興しました。

その中心に位置していた日本橋魚河岸は「日に千両の商い」と言われ、江戸湾で獲れた新鮮な魚が豊富に溢れており、舌の肥えた江戸っ子達が鮨、天ぷら、蕎麦、鰻など江戸独自の食文化を形成しました。中でも、それまでの「寿司」とは全く違う、新鮮な魚で握った出来立ての鮨をその場でつまむ江戸独自の「鮨」は江戸っ子の心を捉え瞬く間に江戸の町を席巻しました。

「究極の鮨」を握る上で欠かせない魚の鮮度。冷蔵庫や氷のない時代、美味しい「鮨」を食べるには「とにかく急ぐ」事が何より重要でした。朝、江戸前で獲れた魚を日本橋魚河岸まで運びすぐさまネタに仕込み、その場で鮨に握り食べる。イキの良さをウリにしていた「日本橋魚河岸」の存在が有ればこそすしの美味しさの追求が可能となり「究極の鮨」が生まれました。

この様に魚の鮮度は「究極の鮨」に欠かせず、新鮮な魚を集める「日本橋魚河岸」の存在がその美味しさを支えていました。

＜日本橋魚市繫榮図＞　「国安」

中でも特に江戸っ子が好んで食べた鮨ネタが鰹。「女房質に入れても初鰹」と言われ江戸っ子の憧れだった鰹の握り鮨。鰹の鮨の美味しさを知っていた江戸っ子は鮮度の良い鰹を求め「押し送り舟」に乗り、波の高い江戸湾の外まで取りに行き急いで日本橋魚河岸まで運んでいました。その日1番の鰹を3両で買いスタッフに振る舞った中村歌右衛門の粋な計らいは江戸っ子の間で評判となり今も語り継がれています。

＜富嶽三十六景　神奈川沖浪裏＞　（葛飾北斎）

「初鰹　むかでのような　船にのり」

新鮮な魚に溢れ、味にうるさい江戸っ子の象徴であった日本橋魚河岸は、江戸の食文化にとって無くてはならないものでした。

その様な中、一世を風靡した「鮨」に存亡の危機が訪れます。1923年の関東大震災により江戸文化の中心として栄えた日本橋魚河岸は消滅。その後、1935年築地市場として再開するも1943年〜1945年の東京大空襲により東京は2度も焼け野原となり、1600年から300年以上にわたり江戸文化の中心であった日本橋魚河岸もその幕を閉じ、伝統の継承が困難となりました。

この江戸っ子の生み出した素晴らし「究極の鮨」を現代に再現し継承する。
それが私達の責務だとおもっています。

そんな我々が考える「究極の鮨」をご紹介させていただきます。
まず究極の鮨復活にあたって、江戸前鮨二鶴は三つの伝統を重んじております。

①本手返し

一つは「本手返し」です。鮨の味を追究する中で辿り着いた製法、いわば「握り」の完成形だと考えております。200年前に誕生したその製法は美味しい鮨を握るのにとても理に適っており、当時の江戸っ子は初めて見る握りの姿を見て

「妖術という身で握るすしの飯」

（1829年）【俳風柳多留】

と驚きの様子が記されています。

ニ鶴では伝統に則り「本手返し」で鮨を握り、店のロゴマークは「握」の漢字をデザインした物です。

歌川国芳「天竺特兵衛」（1825年～1830年頃）

②塩梅

塩梅とは料理の味付けの事を言います。料理の味付けをする時、塩加減と酢加減のバランスの良い状態を「塩梅が良い」と言い、塩梅は素材の自然な味を引き立たせ料理を甘くします。この「塩梅」を利用したのが「鮨」です。酢飯の味付けを塩と酢で行い、塩梅の良い酢飯で鮨を握ると魚の味が引き立ち鮨が甘くなります。砂糖を使わず鮨を甘くする、これが塩梅です。

③鮨ネタの鮮度

味にうるさい江戸っ子がこだわった鮨ネタの鮮度。「究極の鮨」の美味しさの秘密、うま味成分である「イノシン酸」は死後硬直10～24時間でピークに達し、それと同時に「ヒポキサンチン」などの不味成分などに酵素分解され減少します。
塩や酢など伝統的な鮨ネタの仕込みはIMP分解酵素の働きを抑える事が出来るので、可能な限り鮮度の良いうちに手を施しクリアなイノシン酸の最大値を引き出し、米酢3倍のうま味成分を含む赤酢「グルタミン酸」と合わせ、うま味の相乗効果の最大値を生み出します。

私自身、「お客様のため」常に何を求めているかを意識して、それを察知しながら一つの空間を作り出すことを意識しております。この駅伝を応援して頂き、究極の鮨の素晴らしさを共に感じて頂ければ幸いです。

そんな私、丸谷のおすすめのネタ3つを紹介させてください。

-ヤイトカツオ-
ヤイトカツオはカツオの中でも希少な種類で皮目を少し炙りわらで燻してます。
最初は刺身で味わって頂き、その後握りで一貫お出しします。カツオのイノシン酸と赤酢のグルタミン酸は相性がとても良いので、うま味相乗効果をよりお楽しみ頂けると思います。

鰹の握り鮨は200年前の江戸っ子にとって憧れの鮨ネタでしたので、その歴史も踏まえて出しています。ヤイトカツオのアテを食べてもらって丸谷劇場を開幕させます。食べ終わったらすかさず次は握り。その違いを体験してください。

-アナゴ-

近海で獲れた良質な穴子を、秘伝の出汁と煮切った酒で炊いています。「江戸前鮨二鶴　馬借」では穴子本来の味を味わって頂けるように塩のみで提供させて頂きます。穴子本来のうま味と赤酢のうま味、相乗効果をお楽しみ頂ければ幸いです。

-アナゴの写真-

-干瓢巻き-
伝統的な江戸前鮨で海苔巻きと言えば「干瓢巻き」。江戸前鮨ニ鶴の馬借でも人気の一品です。〆として、わさびをしっかりめに効かせております。かんぴょうまきの甘さとわさびの辛さの絡みがとても合うのでぜひ楽しみにしていてください。（もちろん、わさびが苦手であればお申し付けください）

-干瓢巻きの写真-

シャリはお客様の来店に合わせて、炊き上げます。うま味の黄金比を引き出すには赤酢のうま味成分をどれだけお米に含ませるかがポイントです。

【店舗情報】

江戸前鮨二鶴 馬借（NIKAKU BASHAKU）
住所福岡県北九州市小倉北区馬借2-2-14 エルザビル馬借47
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認く