|日本でウールは作れない？！

「日本でウールは作れませんからね」

それを聞いて、ハッとしました。

日本有数の毛織物の産地「尾州」で、古くからものづくりをされているコンバーター（問屋）の社長さんが、商談のときに、さらっとおっしゃった一言です。

確かに、羊を飼って、その毛を刈り取って売る、という仕事を身近に見たことはありません。

にもかかわらず、日本で工業用ウールを量産できない、という当たり前の事に驚いたのは、ファストファッションの店頭で、ウール100%のセーターやベストが山積みに置かれているのが、日常風景になっていたからかもしれません…。

|尾州でリサイクルはずっと昔からやっている

ここ数年、環境活動家のグレタさんが注目を浴びたことや、SDGs(エスディージーズ)「持続可能な開発目標」、という言葉の普及から、環境に配慮した原料や製品が人気です。

尾州でもリサイクルウールを使用した織物が注目を集めているということで、その商品について詳しくお話を聞いているときに、前述の一言を聞いたのでした。

↑木曽川からの水資源の恩恵により、昔から繊維産業が盛んな地域

私たち原ウール株式会社は、尾州で手芸用の手編み糸を中心に企画、販売をしてきた会社です。職業柄、ウールとは切っても切れない関係で、これまでも原料を購入して商品化する、ということはずっとやってきました。

にもかかわらず

「ウールという原料は日本で作ることはできない。輸入に頼らざるを得ないんだ。もし世界情勢により、高値になり過ぎてしまったり、輸入できなくなってしまったらどうしよう…」

そんな問題意識を持ったことはありませんでした…社名にも「ウール」と入っているのに…（恥ずかしながら）。

|尾州はSDGsの最先端

そんな危機意識がすでにシステムの中に組み込まれているのが尾州です。
尾州で廃棄されたウールを再利用しているのは、とにかく「ずっと昔から」で、特別なことでも何でもない、普通のこと。

なぜなら日本では作れないから。
いつでも簡単に手に入るものではないから。
でも「ウール」がないと毛織物の産地はやっていけないから。

↑大量に廃棄される衣服

「限られた資源を大切にする」

そんな姿勢を貫いている、尾州の姿勢に、改めてハッとさせられました。

尾州のものづくりをもっと知りたい！

ということで、リサイクルウール生産の現場を訪ねてみました。

|仕事が細分化されている尾州のシステム

尾州では、一枚の織物ができるまでの仕事は細分化されており、大きく分けると下記のようになります。

・原料屋(「わた」の状態にする)
・紡績工場(「わた」の状態を糸にする)
・整経屋/せいけいや(機織りの機械にセッティングする「経糸」を整える)
・機場/はたば(機織りの機械で織る)
・整理屋(洗いや起毛など、風合いを良くするための後加工をする)

厳密には、上記以外にも、現場同士をつなぐ機屋さんや、問屋さんも大きな役割を担っていらっしゃいます。
とにかく仕事が細分化され、多くの方たちがものづくりに関わっているのが尾州の特徴です。

ちなみに、私たち原ウールも、「小売り」という形で関わる尾州の一員です。

|リサイクルウール専門の紡績工場

今回見学させていただいたのは、紡績工場さんです。

愛知県稲沢市に本社を置く双葉産業さんは、三代続くリサイクルウール専門の紡績工場。
数多くある紡績工場のなかでも、リサイクルウールを専門に扱っている工場はごくわずか。
なぜなら、リサイクルの原料には、ウール以外のポリエステルなどの原料が含まれているため、紡績の命ともいえる「針」がすぐに傷んでしまうから。

↑こちらがその針

それでも、尾州のリサイクルウールの需要は絶え間なくあるので、現在の社長さんの、まだお若い息子さんが後を継がれるそうです。
この日も現場で働いていらっしゃいました。

(ただ、尾州全体では、高齢化が進み、後継ぎがいないため、閉鎖する工場も後を絶ちません…。)

◆再利用される原料

使っている原料はこのように袋に入れられて工場に届きます。
原料は、国内の生産工場で出る糸くずや裁断くず、古着を色ごとに分けて、わた状にしたものです。
外側のパッケージには「黒」や「赤」など書かれてあり、色ごとに分けられていることが分かります。

◆色の付いたわたを混ぜ合わせる

リサイクルウールの特徴は、リサイクルならではの、何色もの色が組み合わさってできる、「メランジ調の色目」です。

新品のウールの場合は、原料の元々の白色(羊そのままの色)に、好きな色を染めることができます。

しかし、リサイクルウールの場合、原料はすでに何らかの色が染められているので、狙った色を作り出すためには、複数の色のわたを組み合わせなければいけません。

こちらの工場でも、事前に仕入れてある、たくさんの色付きのわたから、オーダー通りの色になるよう、長年の勘によって調合します。

それを「カード」という機械に何度も何度もかけることにより、多色のわたがまんべんなくミックスされ、風合いの良い、柔らかいわたに生まれ変わります。
このわたを混ぜる工程で大事なのが、前述した紡績の命である「針」になります。

◆わたを糸の状態に

そして、混ぜ終わったわたを、細い短冊状にし、

ひっぱりながら回転をかけて、糸の状態にしていきます。

これで、織物にするための、糸が完成です！

この技術があるからこそ、尾州ではずっと昔から、途切れることなく、貴重なウールを再利用し続けることができたんだな、と現場を見て実感しました。

|もっと知って欲しい！リサイクルウールのこと

このように作られている、尾州のリサイクルウールのことを、より多くの方に知っていただくために、アウトドアブランケットを企画しました。

↑すべて再利用されたわたの調合によって、作り出された色。深みのある色合いが美しいです。

★暖かさ×軽さ

こだわったのは暖かさと軽さ。

この２つを実現するために接結リバーという特殊な織り方をしています。

まず、暖かさを出すためには、ある程度分厚くしなければいけません。
ただ、そうすると重くなってしまうというデメリットがあります。

この接結リバーという織り方は、分厚い生地を上下に分けて織ることにより、中間に空気の層ができ、そのぶん軽く仕上がります。
（別々に織った2枚を、後からつなぎ合わせているのではなく、2枚を同時に糸で接結しながら織っていきます）

そして、この空気の層が冷たい外気を遮断する断熱材の役割を果たすため、長時間にわたって暖かい状態をキープすることができます。

★羊毛そのもののポテンシャル

もちろん、原料であるウール(羊毛)の持つ優秀さもあります。

あたたかさ

「ウール」という繊維は、細かくちぢれているため、空気を多く含むことができます。空気は熱伝導率が低く、熱が伝わりにくいので、外気の冷たい空気を遮断します。

燃えにくさ

※本製品での難燃性試験は実施しておりません。
また、ウールは繊維の中に、窒素や水分を多く含んでいます。
そのため、燃えにくい天然繊維としても有名です。
ウールは炎にかざしても黒いコブになるだけで燃え広がりません。
溶解せず炭化するため、ひどいやけどを負う危険性も低くなります。

★上品なたたずまい

尾州は国内有数の毛織物の産地ですが、その織物は紳士用のスーツなど、どちらかというと高級アパレルに使用されるのがほとんど。
インテリア用品などに使用されることは少ないです。

今回の接結リバーで織られる生地も、よく使われるのはコートなどのアウターです。

そのためか、織上がった生地には、どこか上品なたたずまいが感じられます。
このどこか上品なたたずまいというのが、尾州で作られる織物の特徴だなーと、いつも感じます。

今まで尾州産ウールの洋服を着たことのない方にも、ブランケットという形で、このたたずまいを味わっていただければ幸いです。

もちろん、アウトドアブランケットとしてお使いいただけるよう、強度も意識して作っています。

仕様

サイズは２サイズご用意

大小、２サイズをご用意いたしました。

小サイズ70cm×170㎝

↑身長180cm前後の男性

↑身長160㎝前後の女性

ひざかけとしてご利用いただけます。
焚火にあたっているときに背中からケープのように羽織れます。
小柄な女性やお子様にも。
細長いのでハンモックでも使いやすいかもしれません。

↑コットで寝るときも、横に垂れ下がらないので便利です。

大サイズ140cm×170㎝

↑身長180cm前後の男性

小サイズの倍の幅があります。
男性が椅子に腰かけて、体をすっぽり覆うことができるサイズです。
テントの中でお休みになるときに寝袋の上からかけても暖かいと思います。

こんな感じで2つに折り曲げて使っても、暖かくておすすめです。

【素材】

・生地本体：ウール60%、ポリエステル30%、アクリル4%、レーヨン3%、ナイロン3%
・刺繍糸：アクリル100%
・ラベル：ポリエステル100%

【色】

・花紺×パープル

・レンガ×カーキ

【お洗濯の際のご注意】

ウールは洗濯機で洗うと縮む可能性があります。
30度以下のぬるま湯で、中性洗剤、手洗いにてお願いします。

特別にキャリー用ベルトもご用意

今回は、特別にキャリー用ベルトもご用意いたしました。
実際にキャンプに行くと、荷物をいかにコンパクトにまとめ、スムーズに持ち運びできるかが重要です。
アウトドア時にブランケットはかさばるので、持ち運びに苦労します。
でも、このキャリー用ベルトがあれば、それもかなり軽減されます！

大サイズ、小サイズ、どちらでもお使いいただけます。

【素材】

本革

【原産国】

中国

今回は、毛織物の産地、尾州で脈々と行われてきた、ウールの再利用について知っていただきたくて、商品の企画を行いました。
より多くの方に尾州を知っていただき、製品を手に取っていただく機会になりましたら幸いです。

スケジュール

3月下旬より順次配送開始、4月末に配送完了予定です。
具体的な日にちが決まりましたら、活動レポートにてご報告いたします。

私たちについて

私たち原ウール株式会社は、日本有数の毛織物の産地である尾州地域に拠点を置き、糸、生地にまつわるさまざまなプロダクトを企画しています。

弊社は、過去には、尾州織物を手芸用・洋裁の材料として取り扱いをしてきましたが、自社オリジナル製品としての企画、発売は今回が初めてとなります。

今後も尾州の魅力を知っていただく活動に力を入れていく予定です。

応援よろしくお願いします。