猟師が仕留めて作った　愛犬用鹿肉ジャーキー「伊勢の鹿」

かつて「伊勢国」と呼ばれた三重県多気町勢和地区（旧勢和村）で、狩猟を50年以上続ける堀口尚巳は今年で85歳。地元の猟師グループ「勢和大物猟クラブ」の長老であり、私、高橋祐子の父でもあります。

勢和地区でも、近年獣害被害に悩まされています。人が自然破壊したからと思われがちですが、林業の衰退とともに山が荒れ、それまで山の奥のほうにしかいなかった鹿や猪が集落の近くまで来るようになってしまったから、と父は言います。

鹿や猪が増え続けているのに、猟師たちの平均年齢は上がる一方。それでも農家さんから「ようけ獲ってえな」と言われると、老骨に鞭打って山に入るのです。

そんな猟師たちを応援したい、そして勢和地区のこと、山のこと、猟師たちのことをもっと知ってもらいたいと思い、「伊勢の鹿」ははじまりました。

『日本書紀』の時代から伊勢国は「美（うま）し国」と称されるほど、山の幸、海の幸に恵まれた地域です。

山林が多くを占める勢和地区には、鹿が大好きな草や木が年中生い茂り、気候もおだやか。そんな土地でのびのび育った鹿は、ほどよく引き締まり、良質な赤身肉となります。

勢和地区でも特に山深い場所に、猟師たちがみんなで建てた猟師小屋があります。

いろり鍋には骨付きの鹿肉が煮込まれて、これは猟犬たちの「おやつ」になります。猟犬たちはこの「おやつ」が大好き。鹿肉はやがて猟犬たちの血肉となり、命はつながっていきます。

そして猟師たちは、「山の神さん」に感謝の祈りをささげます。

「伊勢の鹿」は、普段猟師たちが口にするモモ肉やロース肉のみを使用。さらに、スジや脂身を削ぎ落とし、口あたりのよい赤身肉に仕上げています。トリミングが終わったら、肉をスライサーにかけます。薄くスライスすることで、パキパキ割って与えやすいジャーキーになります。

ただしこの作業は立ち仕事なうえに、根気が必要。父は「自動スライサーがほしいなあ」とこぼします。

スライスした鹿肉は、食品乾燥機で10時間かけてじっくり乾燥。そうすることで、栄養をぎゅっと凝縮したジャーキーができあがります。

父はこの鹿肉ジャーキーづくりを、80歳を過ぎてからはじめました。

「伊勢の鹿」に含まれるタンパク質は84％以上。高タンパクで低脂肪、ダイエット中の愛犬にもぴったりなおやつです。また鹿肉に多く含まれるというカルニチンは、脂肪燃焼に欠かせない栄養素として注目をあびています。

そして、パッケージを開けるとふわっと広がる、甘く香ばしい野生鹿のにおい。このにおいと味が、犬の本能を満たしてくれるでしょう。

夏の暑さの影響は、夏が終わった頃にやってきます。シニア犬や食欲が落ち気味な愛犬に、ぜひ食べてもらいたいです。

これまでのプラスチック製の袋から、缶や瓶など再利用できるパッケージへ。レギュラー缶は背のある楕円形で、ジャーキーが取り出しやすい形になっています。フレーク瓶はころんと丸みをおびた形。フードにふりかけるときも、トントンと適量をふりかけやすいです。キッチンに置いても絵になるパッケージデザインを目指し、現在制作中。食べ終わったあとは、ほかの開封ずみのおやつの保存缶・瓶としても使えます。

プラスチックごみを減らすことで、プラスチックを食べて苦しむ動物を少しでも減らしたいというのが願いです。

レギュラージャーキーは、手で簡単にパキパキと割ることができます。せっかちな愛犬や、食べるのが上手じゃない愛犬にも安心して与えられます。手でくだいて、フードにトッピングしても喜ばれます。

フレークは、食感が残るくらいの「つぶつぶ」感を残しています。「食欲が落ちた子のフードにふりかけたら全部食べてくれた」という声も多くいただいています。また、シニア犬にはフレークを水にふやかして、やわらかくするのもおすすめです。ふやかしたあとの水は鹿肉のだしが出て、おいしいスープになっています。

７月 パッケージデザイン完了

８月 製造開始

９月 発送

ポットベリー 高橋祐子

猟師のみなさんたちにお願いして、山に連れていってもらったことがあります。山に入るとみなさん猟師の顔になるんですね。年齢をものともせずに、さっさかさっさか、けもの道を登っていきます。けれども、「若手がいてくれたら助かるのになあ……」というのが、みなさん正直なところ。役場の方が「20年前と同じメンバー」なことに驚かれていました。「伊勢の鹿」が猟師さんたちの間に、新しい風を呼び込めたらと願っています。

みなさんにいただいたご支援は、猟師小屋の運営（最近補修が必要になってきました）と、新しいパッケージ製作にあてさせていただきます。