プロジェクト概要

東日本大震災で穴窯が倒壊

2011年3月11日、東日本大震災が起き、益子町も大きな被害が起きました。薪窯の大半が倒壊したのです。それまで愛情をもって親しんできた私の穴窯（薪窯）も大きな音と土煙をあげて一瞬にして崩れ去りました。見た瞬間、どうしようもない失望感にかられ「もうダメだ～」と思いました。それから長い間、放心状態で何も手がつかない状態が続きました。しかし、６月の梅雨に入って、全国から集まって頂いたボランティアの方がガレキを綺麗に整理してくれ、その更地になった窯跡を見て、感謝と責任が湧き出て、もう一度、伝統の穴窯を作ろうと決心しました。

多くの人に支えられて再建

いろんなところに応援をお願いして、レンガなど義援物資が各地の焼きもの産地から寄せられ、また益子町出身で大塚商会創業者の故大塚実様（益子焼の窯元の生まれ）から益子焼業界復興のために多額の義援金を頂きました。そして、ボランティアの方々と共に新しい穴窯を再建することになり、その完成に近づいたのが下記の写真（2011年12月）です。

窯が乾燥して使える状態になったのが、翌年2012年の５月。やっと再出発の準備が出来ました。しかし、2020年にはコロナが大流行し、展示会も出来なくなり、今、どん底に陥っています。

骨壺創作は陶芸家の役目

東日本大震災で多くの方が亡くなったり、行方不明になっています。穴窯が倒壊し、もう一度作品づくりをやろうと思ったのは、人間にとって骨壺の重要性をさらに認識したからです。次の世界に向かうための平和で安らぎの空間が骨壺だと思うようになり、骨壺を益子焼の伝統技術を活かして創作するシリーズを自然に帰る美の骨壺「桃源壺」と名付けました。

以下、私の陶歴ですが、震災後の2014年に河原陶房の中に、骨壺専門の「壺中庵（こちゅうあん）」を開き、素朴で美しい作陶活動を続けています。

想いや特長が説明できるマクアケに初挑戦

陶芸の世界の新しい試みである美術陶器としての骨壺を、オンラインでも販売したいと考え、作品への想いや特長をきちんと説明できるマクアケに挑戦することにしました。

益子焼の伝統技術で創り上げた「自然に帰る～美の骨壺」シリーズの自信作７個をご用意しました。７個それぞれのコンセプトも伝統技術も違い、個性があります。（詳細は「プロジェクト詳細」をご覧ください）

土を知り、土と語り合いながら創作

陶土は高所の岩石などが溶け出し堆積したものが地中に眠る生きものです。地域によって異なる土を知り、土を生かす方法を探ることから始まります。そして土を練り、ロクロ成形に入ります。土を操るのではなく、土を愛おしむように導くのです。

成形が済んだら適切な部分にヘラなどを使い顔を入れます。人形で言えば、目を入れるようなものです。

その後、十分寝かせてから入念に仕上げを行い、乾燥、素焼きをして施釉に入ります。釉薬は8年以上熟成させたものを使い良い発色を促します。

その後、最も神経を使う窯焼です。穴窯で10日間、ガス窯で3日間、炎と向き合います。1300度の窯の中は神秘の世界、我を忘れて陶酔する日が続きます。

そして数日後に窯出しです。失敗には慣れていますが、悔しい窯出しです。無力感に駆られますが、10点の内1〜2点だけ私を喜ばせてくれ、それが次回へのエネルギーです。

プロジェクト詳細

益子町は東関東の栃木県芳賀郡にある人口約２万人の町です。益子焼は江戸時代末期、笠間で修行した大塚啓三郎が窯を築いたことに始まると言われています。以来、優れた陶土を産出すること、大市場東京に近いことから、鉢、水がめ、土瓶など日用の道具の産地として発展をとげます。また、「益子陶器市」が1966年（昭和４1年）から始まり、例年、春のゴールデンウイークと秋の11月3日前後に開催されます。その益子の山奥に「河原陶房」があり、その中に骨壺専門の「壺中庵」があります。

河原陶房のご案内

右手に穴窯、その奥に菜園と果樹園があり、四季折々の作物を育てながら質素に暮らしています。自然は私の教科書、自然物から全てを学びます。

河原陶房の施設

益子焼の伝統を継承し、素朴で美しい作品を創作するために、さまざまな充実した施設や道具があります。窯は、穴窯（薪窯）とガス窯があり、穴窯用の3000束の薪を備えています。この施設があるからこそ、私の作陶が可能です。

骨壺の制作過程

保管されている土（陶土）を荒練りした後、土の堅さを均一化すると共に土の中の気泡を取り除いて土の状態を「菊練」と言う手法で整えながら、土の状態を理解します。

ロクロでは、土と向き合い、土の意思を感じ、土と語らいながらカタチを創っていきます。

蓋の持ち手を指先で感じながら創ります。

最後にヘラ目で顔を入れて、正面に位置を定めます。その後、数日、乾燥させます。

８年以上も熟成させたハチミツのような釉薬を壺に着物を着せるように施釉します。

火入れ、窯に命を吹き込み、炎に窯を託す緊張の時。

壺中庵骨壺の特長

壺中庵の骨壺は、骨壺の中が結露して水が底に溜まらないように透水性の陶土を底面に施してあります。

壺中庵の骨壺は、生前にも花器としても美術品としても鑑賞できるように益子焼の特長を持った作品です。

リターンとその仕様

リターンは、世界に一つしかない７個の骨壺です。それぞれ特長がありますので、よくご覧になってお選びください。

Ａ「自然釉耳付桃源壺」の詳しい映像はこちらをクリック

Ｂ「松皮紋桃源壺」の詳しい映像はこちらをクリック

Ｃ「窯変桃源壺」の詳しい映像はこちらをクリック

Ｄ「松皮紋桃源壺」の詳しい映像はこちらをクリック

Ｅ「志野面取桃源壺」の詳しい映像はこちらをクリック

Ｆ「糠白釉面取桃源壺」の詳しい映像はこちらをクリック

Ｇ「窯変面取桃源壺」の詳しい映像はこちらをクリック

なお、骨壺は桐箱に詰めて、風呂敷に包んでお送りします。

スケジュール

プロジェクト実施の計画は下記の予定です。

2022年11月19日（土）マクアケにて公開

2023年1月10日（火）公開終了

2023年1月31日（火）配送予定

資金の使い道

応援購入頂いた資金は、本商品のバージョンアップ、広報、新規開発に使用する予定です。どうぞ、宜しくお願いします。

実行者紹介

益子焼の陶芸家「河原健雄」は、1951年に栃木県の茂木町に生まれ、高校卒業後、陶芸家の道を歩んできました。地域の伝統産業の中でも陶芸家は非常に厳しい時代となっています。今回のマクアケへの挑戦は、全国の陶芸家の道を開きたいと思い、頑張っています。皆さまの暖かい応援をお待ちしております。

骨壺の制作にかける想い

父の葬儀がきっかけ

骨壺の制作に取り組むようになったのは父の葬儀がきっかけでした。葬儀社から提供された白い半磁器の骨壺を見て、陶芸家として自分で作ってあげたかったなあと寂しい思いに駆られたのです。博物館にある美術品として価値のある壺の中で、蓋（ふた）がついている焼き物は骨壺であることが多いのです。

骨壺は陶芸家の仕事

もちろん陶芸家としての私は、器、食器、茶道具などを制作してきましたし、むしろそのような茶器を制作することが、陶芸家としての本来の仕事であって、骨壺の制作は我々の仕事ではないとみなしていたところがありました。しかし、父の死をきっかけに骨壺の制作はむしろ陶芸家にとって必要な仕事だと思うようになりました。

壺の中でくつろいで頂く

漢詩の中に、「壺中居（こちゅうきょ）」とか「壺中庵（こちゅうあん）」といった表現があり、壺の中は非常に心地の良い、次の世界につながる安息の場所だとされています。私の骨壺の内部は、あまり人手による装飾のない、宇宙のようなイメージになる釉（うわぐすり）をかけて制作しています。その中でくつろいでいただきたいという思いからです。

骨壺を飾って語らいを

今まで骨壺をお求めいただいたオーナーは、これを飾っておく方が圧倒的に多い。友人と自分の死を題材にして骨壺自慢をしたり、来客との語らいの話題として使う。決して死を暗くとらえてはいないのです。

骨壺は人生を考えるきっかけ

私としては、骨壺をお求めになるのなら、できるだけ若いうちにご夫婦で購入して、花を生けたり、大事なものをしまったり、美術品として長く楽しんでいただきたいと思っています。たまには骨壺として鑑賞して、自らの終着駅を想像する。ここから逆算して今を生きれば、必ず有意義な人生が送れるはずです。骨壺を、今を見つめるきっかけとしていただけるのなら、所有する価値は十分にあると思います。

自分を見つめ直す機会

骨壺を求めようとする方は、死を忌避するのではなく、前向きに捉えています。思い出深いのは、骨壺に蛇口をつけて、元気なうちは焼酎甕（しょうちゅうがめ）として使用し、焼酎がたっぷりしみ込んだ骨壺に入れたら幸せだと言っていた経営者の方です。これからも毅然として困難に立ち向かい、堂々とした人生を送って行く覚悟なんだなあと感じました。飾ったりしまったりする方もいますが、完全にしまっておく方はめったにいません。やはり人生の伴侶として、現在の自分を見つめ直す機会とされている方が多いのだと考えています。

「土に帰る」が共通理念

2012年に創作骨壺「桃源壺」を発表してから数年の間、キリスト教や仏教、神道などの関係者と話をさせていただき、死については「土に帰る」という理解が、共通なのではないかと思いました。私の作品に宗教性は全くありませんが、土器から進化してきた陶器の、土の中に還るイメージが、骨壺には適しています。さらに、陶器は断熱性が高く、通気性も良いので、結露にも強いのです。

美術品として鑑賞

骨壺は、どのような経緯で準備することになるにせよ、一人に一つ必要なものです。私には美術品として鑑賞していただきたいと思う分、焼き物の理解者に、美術品として価値あるものと認めてもらえるだけのものを作らなければならないという、厳しい使命があります。

土選びと窯焼が最も重要

したがって、陶芸家として使える技術をすべて使って、陶芸作品として制作しています。陶芸は「１．土 ２．窯 ３．つくり」と言ったり、「１．窯 ２．土 ３．つくり」と言いますが、土選びと窯焼が最も重要という意味です。土を知り、土を活かし、窯焼に全力で向かい合うのが焼物です。

飽きの来ない美術品

10年、20年、30年と、去年見えなかったものが今年見えてくる。陶芸家の技術以上に、土と窯が作り出す自然の神秘が、年々明らかになってくるところに、飽きの来ない美術品としての価値があるのだと思います。しかし私自身も、伝統的なものに、現代的なデザインを取り入れています。私の注ぎ込んだ技術が、10年後、20年後、別の形でオーナー様に見えてくるようになれば、それも飽きの来ない美術品としての要素だと考えています。

陶芸家の宿命として

日常的に使っていただく、しかも美術品としてのレベルは高く保ちたいとなると、作り手が全力でそれなりのものを注ぎ込んでおかないと、飽きが来てしまいます。さらに自然の力と人間の技術の総合作品ですから、10個作っても、満足のいくものは、2個くらいしかできません。それも仕方のないことだと思いますし、納得のいかないものは作品として完成度が低く破棄せざるを得ません。70歳を超えた今、無力さを感じ、益々の努力を重ねなければと思います。

陶芸家 河原健雄

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー