§ 『ネコ触診教材』と『動物実験』 §

　『ネコ触診教材』とは、獣医師・動物看護師を育成する教育機関（大学・専門学校）の実習等で、生体（動物そのもの）の代わりとなるシミュレーション教材です。

§ 実行者紹介 §

　櫻井富士朗　獣医師

　私は40年に渡り臨床獣医師として動物病院を運営する傍ら、周辺事業にも積極的に関わってまいりました。

　動物看護師教育にも取り組み、日本獣医生命科学大学非常勤講師、帝京科学大学教授などを歴任致しました。

　現在は桜井動物病院院長、慶應義塾大学訪問教授、日本動物看護学会理事長として活動をしています。

§ 商品開発の経緯と背景 §

　獣医系・動物看護系教育機関の実習現場では、生体を用いた実習は必要不可欠なものですが、対象となる動物とっては少なからず苦痛を伴います。

　近年の動物愛護や動物福祉への意識の高まりを受け、生体を用いた実習は、学生実習であってもすべて「動物実験」とみなされるようになり、３Ｒの原則によって動物への負担・苦痛の軽減を図ることが求められるようになりました。

　≪実験動物の国際原則３Ｒ≫

　　Replacement：動物から他の手段への代替

　　Reduction：使用数の削減

　　Refinement：実験技術の洗練

　人間の医療においては、既に塩化ビニールやウレタン材などの素材で疾病や看護・介護用の人形を作成した代替教材を用いた教育が一般化されていますが、動物医療の世界ではシミュレーション教材市場は大きく後れをとっています。

　10年くらい前までは実習における生体の使用が許されていたことがその大きな理由ですが、近年の欧米を中心とした世界的な動物福祉意識の高まりがあり、我が国の獣医系・動物看護系教育機関においても生体を用いた実習への反発は年々高くなっています。

　もちろん最終的な技術研鑚には生体での実習が不可欠であることは言うまでもありませんが、初学者への教育に適切な教材を活用する努力を怠たれば、学ぶ側の学生からの批判や、親・高校生からの受験拒否を受けることを免れません。

　獣医系・動物看護系教育機関の教育現場では、将来の有能な人材を育てるためであっても「動物虐待」のそしりを受けかねないリスクを抱えているのが現状です。

　しかしながら現在、国内で代替教材を専門に開発する会社はなく、海外製品も価格や品質、アフターケア等の面で代替教材としての必要性に応えられていません。

　「それならば自分たちで作ってしまおう」と私が帝京科学大学在勤中から研究を始め、定年退職後は(有)サンラボで開発を続けているものが『動物医療用シミュレーション教材』です。

当社で開発している『動物医療用シミュレーション教材』のうち、今回クラウドファンディングのプロジェクトとしたものが『ネコ触診教材』です。

　ネコは興奮すると暴れる、逃走する、咬む、引っ掻くといった危険があり、ネコを扱える保定（ほてい：臨床的に取り扱う技術のこと）技術を持った教員数も限られるため、教育現場においてイヌに比べてネコを使用した実習が極端に少ないというのが実情です。

　2017年の実態調査でネコの飼育頭数がイヌの飼育頭数を初めて上回ったことが大きく報道されましたが、動物病院における診療機会が犬と同等であるにも関わらず、ネコの取扱いに習熟する十分な機会が与えられていない卒業生を輩出することは、雇用する立場でもある私の問題意識でもありました。

　『ネコ触診教材』は、腎臓、妊娠子宮、膀胱、肛門等の臓器・器官を、その形態、硬度、触感を、超軟質ウレタン材を用いて本物とそっくりに再現させ、ネコぬいぐるみの腹部内に埋め込んだものです。

　腹部臓器の適正硬度(軟らかさ)が教材としての生命線であり、生体実習に代替できる品質に徹底的にこだわりました。

　2013年12月には実用新案(登録第3187936号・登録第3187937号)を取得しています。

　また、教材であっても愛されるキャラクターとなるように、ぬいぐるみのデザインは「ＴＶチャンピオン・全国ぬいぐるみ職人選手権」にも出演された鍋島知津子さんにお願いしました。

　大切な愛猫として、自社工房で1つ1つ手作り（ハンドメイド）で製作いたしております。

§ 最後に §

　獣医系・動物看護系教育機関の実習において、『ネコ触診教材』が採用されればされるほど、生体実習に使われるネコを減らすことができます。

　また、「獣医師・動物看護師の卵」にネコの取扱いに習熟する機会を提供することができます。

　『ネコ触診教材』は、多くの方々の協力を頂きながら試作や性能評価を重ね、商品化にこぎ着けることができました。

　このクラウドファンディングのプロジェクトを通じて量産のための資金を獲得し、獣医系・動物看護系教育機関からの注文に応えたいと考えています。

　愛猫家の皆様、動物福祉をこころざす皆様から広くご支援を賜れば幸いです。