【2021年4月1日追記】

リターン内容に一部修正がございました。

詳細は活動レポートをご確認くださいませ。

https://www.makuake.com/project/malmaisongogo/communication/

日本の洋菓子界を支えてきた大山栄蔵シェフがついに引退。最後にMakuakeで44年間愛され続けた洋菓子を全国の皆様にお届けします。

「72歳だから疲れた。もういいよね。辞めても。」

色鮮やかなケーキが陳列するショーケースを眺めながら、洋菓子界のレジェンドは、軽い口調で語りました。

世田谷区赤堤に本店を構える「マルメゾン」のパティシエ・大山栄蔵さんは、日本の洋菓子業界を変えたといわれる人物。

世田谷区赤堤に本店を構える「マルメゾン」のパティシエ・大山栄蔵さんは、日本の洋菓子業界のを変えたとも言われる知る人ぞ知る著名人。

大山さんは、約50年前に渡仏し、フランス洋菓子を現地の名店で学び、日本にその技術をもたらしただけでなく、数々の著名なパティシエを育て、輩出してきたレジェンドの中のレジェンドです。

そんな大山さんの「お菓子を共に生きた激動の人生」とお菓子、そして彼のアトリエの今後について、多くの方に知っていただきたい！

このプロジェクトは、こんな思いから始まりました。

日本の洋菓子界のお手本となった名作をMakuakeから最後に全国へ販売

■ムースマルメゾン

弟子たちがマルメゾンで最も影響を受けたのが、このムースマルメゾン。
口溶けの良いムースの中にキャラメルに苦みと香りがインパクトを与えている。

■シャンティ

フランス北部にあるシャンティ城で太陽王ルイ14世を招いて開かれた宴会の際に宮廷料理人ヴァテールが考案したのが、砂糖を入れて泡立てたホイップ・クリーム「クレーム・シャンティ"crème Chantilly"」です。大山さんは、これを日本の食材を使って、より洗練された味に昇華しています。甘すぎず、あっという間に食べられてしまう美味しさがあります。

■和栗のモンブラン

強烈なファンをもつマルメゾンの人気商品です。
日本の栗の味わいを引き立てた名作。

■焼き菓子＆チョコ

本場で学んだ焼き菓子やチョコレートも詰め合わせで販売します。
大山さんが作り出した名作は、数々ありますが、焼き菓子やチョコレートも傑作揃い。
おそらくこれが最後になるかもしれません。レジェンドの逸品を心に刻んでください。

今から50年前、大山栄蔵さん22歳は、フランスへ

【渡仏時の学生証の写真】

外国で仕事をしたい！

高校を卒業した大山青年が選んだ道は、料理人。

駒込・香川調理製菓専門学校のフランス料理を主に学ばれた後、六本木にあった人気店「ルコント」に就職したそうです。

この店は、当時日本では珍しく、本格的なフランス菓子を提供する店。

そこでフランス菓子の魅力に憑かれた大山さんは、22歳で渡仏修業に出ます。

今でこそ、パティシエになる為に多くの人が海外に修業に行きますが、まさに大山さんを筆頭とする世代が、第一世代でした。ここで大山さんが「パイオニア」で在り続ける事が、運命づけられたのかもしれません。

1971年といえば、海外に行くこと自体、一般的ではなかった時代

「不安はありませんでしたか？」と私たちは聞きました。

すると大山さんは豪快に笑い飛ばしたのです。

「なかったね。とにかく一生懸命に仕事をしたし、多くの事を学びたかった」

とにかく思考がシンプルで、明快。そして、日本人離れしたこの恐れを知らない活力こそが、洋菓子業界を第一線で活躍された秘訣なのでしょう。

当時修業していた頃からの思い入れのあるケーキについてたずねると、大山さんは、真っ先に「オペラ」を挙げました。

渡仏後にクラシック菓子を主流とする「アンドレ・イケ」で修業し基礎を学んだ後、ヌーベルキュイジーヌ思想の影響を強く受けたパリの人気店「モーデュイ」へ。

この店は、当時最先端であったシブーストやババロアなど新しくて軽いお菓子が作られていました。大山さんが驚いたのは、スタッフは若者ばかりで、新しい技術を積極的に取り入れるだけでなく、自分なりに工夫を凝らしたデコレーションに仕上げることも許されたそうです。

新参者で、当時フランスでは珍しい日本人の大山さんの商品も、ショーケースに並んだのだとか。経験や人種等関係なく、「自由」で個々を尊重されるそのフランスらしさに感銘を受けたそうです。

大山さんの思い入れがあるケーキとしてあげた「オペラ」は、この「モーデュイ」で学びました。チョコレートなどで文字や模様を書く「パイピング」という技術が要求され、ケーキに直接「Opera」と文字を記すので、失敗が許されません。

今でもお弟子さんは極度に緊張するそうです。

若かりし日の大山さんも、おそらく同じように緊張しながらパイピングしたのかもしれません。大山さんにとって、このオペラは「成長と自由」の象徴なのでしょう。

さらに大山さんは、伝統菓子の店「シャントン」で一年修業を積みました。

ここでは、合理的な生産を重んじるのではなく、常に均等にどの商品に対しても熟練の技を提供し続ける「本物の職人」の技を学んだそうです。

その精神は、今もお弟子さんに引き継がれていて、ケーキのスポンジのきめの細やかさや工程ひとつを、厳しく、丁寧に指導を続けてきました。

取材中も、「この商品の生地はもっと均一に細やかでなくてはいけない。あとで工程の振り返りをするように」と指導されていました。

その眼差しは50年間変わらず、真剣で、情熱的、なにより生き生きしているように見えます。

フランスでケーキの基礎を学んだ大山さんは、パリ最高峰の宮殿ホテル「ホテル・プラザ・アテネ」へと向かいました。

ホテルでのデザートとは、テイクアウトが中心のパティスリーとは違い、コース料理の最後を飾る「食事の大団円」を演出しなくてはなりません。お客様の食事のスピードや癖を頭に叩き込んだうえで、食事が終わったタイミングとデザートが最高のコンディションとなる瞬間を合わせます。

パリ最高峰のホテルで、大山さんは、「ホスピタリティ」を学んだのです。 

フランスでの修業を終えた大山さんは、惜しまれつつも日本へ帰国。

実直に学び続けた証明として、就業証明書にサインしてもらい（これをきちんともらって帰る人はほとんどいなかったのだとか）、実践の場を東京の世田谷区成城に移しました。

1977年、28歳の時、大山さんは自らの店「マルメゾン」を世田谷区成城に開きました。

マルとは「〇」。美味しいものをつくる。ＯＫの意味を込めたとのこと。

本場フランス・パリで学んだ経験を、日本で自信をもって店を開いたそうですが、当初は

「甘い」「アルコール分が強い」と想像もしていなかった評価を受けたそうです。

その理由として「店に会いに来るお客様を、フランス人だと考えていた。」

と大山さんは振り返ります。

肉料理がメインで複雑でしっかりした味を好むフランス人に対し、日本人はシンプルで、繊細、季節に敏感な味覚をもっているのだそうです。

そこで、「プランタン」を始めとする季節のフルーツをふんだんに使った素材の甘さ・旨さを活かした商品を開発したところ、瞬く間に人気店となっていきました。

フジテレビ「料理の鉄人」の監修・出演等を務めていた当時に作成したお誕生日ケーキの数々。これはいわゆる似顔絵ケーキの走りでもあります。

「でもね、それはケーキを日本風にアレンジしたということではなくて、自分流にしたってことなんだよね。当時好まれるケーキに迎合していったら、今この店はなかったと思うな。今では珍しくないだろうけれど、あのとき「フランス菓子の店」というのは珍しかった。他店とは違うそのスタイルを続けてきたからこそ、今こうして店が残っているんだと思う。」

マルメゾンの評判は、あっという間に洋菓子界に広まり、不動のものになっていきました。

この写真は現役の大山さんが50年間、朝から晩までケーキについて考え、カレンダーの裏や当時のノートに書かれたレシピの数々。そのレシピは少しずつ変えているそうです。

「時代の変化にともなって、人の好む味も少しずつ変わっていくから、もちろん開店当初と現在でつくっているものは違っているよ。それでも変わらない人気の商品もあるけれどね。こうやって商品開発を続ける日々も引退したら、なくなってサッパリするんだろうね」と少しさみしそうに話す大山さん。

大山さんの研鑽の日々のなか、生まれた名作たちを、是非皆様に食べていただきたいと考えています。

以来、多くの弟子が大山さんのもとを訪ね、修業を重ねました。

今年3月、大山さんは、私たちにお弟子さんとの写真を何枚もみせてくれました。

中央にいるお弟子さんは、現在、西八王子で人気の「PATISSERIE Tomirie」の江原さん。大山さんは、この写真を懐かしそうに眺めながら、多くの名パティシエを輩出した秘訣をゆっくりと語ってくれました。

※懐かしい写真の数々を見せてくださる大山さんとスタッフ・熊谷

「パティシエは創造力と持続力が必要な仕事。疲れて、やる気や創造力を失ってはいけないんだ。仕事を好きになって、継続する力を培うことが大事な職種なんだよね。だから、私は弟子には最初からすべての工程を作らせて学ばせている。自分の店ではだいたい3年で卒業させるし、出店したい弟子にはできる限り助けてあげたいんだ。そのために労働雇用条件も待遇を良くしたし、厳しく指導しているけれど、技術も叩き込んであげたいと思ってきた。」

マルメゾンで卒業したパティシエたち。

学芸大前の「リュードパッシー」の長嶋正樹氏、
板橋区の「ラ・ノブティック」の日高宜博氏、
南青山の「アニバーサリー」の本橋雅人氏、
大阪府堺市の名店「ル・グラン・シャリオ」の伏木和毅氏

その外にも多くのお弟子さんが、「大山イズム」を継承。

今も日本の洋菓子業界を支える名パティシエとして活躍しています。

最後の日

私たちは、朝、マルメゾンに伺いました。そこは、いつもと変わらぬ風景。

ショーケースの中には、色鮮やかで様々な種類のカットケーキやホールケーキが並んでいました。いつもと違うのは、お店に並ぶ多くの花束。

「わざわざOBの子が辞めること聞きつけて贈ってくれたんだよ」と嬉しそうに話す大山さんが印象的でした。

店を訪れていたお客様たち、娘さんの手を引いた親子や老夫婦は、

「今日も来ちゃいました。」と名残を惜しむように、何度も続けて来ているようでした。

最終日から一夜あけた翌日、お店を片付けるご夫婦の姿が印象的でした。

ショーウィンドウを片付ける大山さん。長年お店を彩ってきた小物や貼り物を剥がす奥様。どこか寂しそうなご様子でした。

大山栄蔵さんは、ご自分の事を洋菓子職人と呼びます。

「こつこつと仕事をする職人は、裏方。陰の演出家なんです。主役は食べる人、もっといえば、食べた人の笑顔でしょうか」

日本の洋菓子界を変えた偉大なる演出家が、用意した舞台が幕を閉じました。

マルメゾンの今後について

多くの洋菓子が作られ、弟子たちが修業をした大山さんのアトリエ。

レジェンドが引退した後も、この場を使ってもらえる人を探したい、という思いから、このプロジェクトはスタートしました。

プロジェクトチームである株式会社ジェクトワンでは、空き家や空き店舗を地域のために利活用する「アキサポ」という事業を行ってまいりました。家や店舗に込められた思いを、次世代に引き継ぐために工事費用などのサポートを通し、社会課題とされている「空き家問題」を解消するべく動いています。

私たちは、大山さんがこれまでどのような思いで洋菓子業界を牽引して来られたか、また未来を担う飲食起業家たちへの想いの熱さをひしひしと感じました。

この大山イズムを継承出来るような「シェアキッチン」をここで始めてみてはどうだろう？

初めは、レジェンドにご提案するのには勇気がいりましたが、恐る恐る提案したところ、

「いいね。今、このご時世でなかなか店を持つ事に躊躇している人も多いだろうし、そういう人達にとっての拠点になってくれたらありがたいよね」と快くご賛同を頂きました。

時代を引っ張ってきた大山さんだからこそ、新しい潮流を受け容れる姿勢に、感銘をうけました。

私たちは、大山さんの花道を飾りつつ、次の継承者への道筋をつくっていけるよう、努めていこうと考えています。

大山さんが作り上げたケーキのほかに、私たちが提案したのは、

日本最高レベルのお菓子教室

洋菓子の歴史や技術が詰まった大山さんが出張し、惜しみなく技術を教えてくれます。

プロも興味津々の高い技術ですが、ご家庭への出張お菓子教室も特別に受け付けます。

トップレベルの洋菓子を作り出してきた厨房をMakuake先行でお貸しします。

そもそも、プロジェクトが立ち上がったのは、株式会社ジェクトワンに勤める二人、

熊谷 浩太、石井 萌奈が、使わなくなるキッチンを貸し出したいとマルメゾンから依頼があったことから、始まりました。

この厨房は、いわば、日本の洋菓子の最前線。什器の種類やレイアウトのすべてが計算されつくされています。なにより、大山さんだけでなく、多くのパティシエたちの思い出が詰まっています。

※左:石井、右:熊谷

■実行者紹介

大山　栄蔵（おおやま・えいぞう）

1949年、埼玉県生まれ。香川栄養専門学校卒業。東京・六本木の「ルコント」に2年間勤務し、71年に渡仏。パリの一流店で修業。77年、東京・成城に「マルメゾン」を開店。一般社団法人日本洋菓子協会連合会副会長、公益社団法人東京洋菓子協会会長、聖徳大学客員教授。2016年、「現代の名工」に選定される。

株式会社ジェクトワン/担当：熊谷 浩太（くまがい・こうた）

一級建築士・宅地建物取引士

1986年　東京生まれ

2011年　法政大学大学院建設工学専攻 修了
在学中は設計コンペに明け暮れ、修士設計最優秀賞 受賞
大手鉄道会社 入社後は、大型開発に携わる

2016年　マンションデベロッパーへ転職し、激動の不動産業界へ

2019年　会社初の『グッドデザイン賞』受賞

2020年　株式会社ジェクトワン入社

開発ユニット及び空き家活用の責任者としてプロジェクト推進を担う
新たなライフスタイルや付加価値を提供するものづくりを目指しています

担当：石井萌奈（いしい・もえな）

空き家活用プランナー・宅地建物取引士

1991年　横浜生まれ

2014年　立教大学文学部文学科文芸思想専修卒業
在学中に、演劇に夢中になり、スタッフとして地方巡業する最中、地域再生・空き家活用に興味を持つ
大手不動産仲介会社にて、総合職として世間の荒波に揉まれる中、不動産の基礎知識を叩きこまれる

2018年　株式会社ジェクトワン入社
豊島区との官民連携事業「コマワリキッチン」等のプロジェクトリーダーを務める
地域に喜んでもらえる活用を志しています