京友禅の型を彫る職人。
きものの染色技法で革を染める職人。
そして、きものの新しいカタチを追い求めるOMIYA CONNECT。

京都に拠点を構える上記３社と革小物ブランドsugataがタッグを組んで作った、二つ折りの薄型財布をご紹介します。

このプロジェクトを実行するOMIYA CONNECTは、着物文化の伝統技術と、現代のデザインを掛け合わせたモノづくりを企画し、国境やジャンルを超えて、京都の「ものづくり文化と技」を発信しています。

振袖・留袖・訪問着など、着物の柄をつくる技術は様々ありますが、今回はその中でも「型染め」という染色技法と、その型を彫る職人さん２人のコラボレーションを通じて、お財布の染め柄を生み出しました。

①友禅彫刻による染め柄の原版づくり
今回、型染めという染色技法を革に施すにあたって、染め型の原版を西村友禅彫刻店の西村武志さんに彫って頂きました。

京友禅を染めるために使う型紙を彫る専属型彫として昭和9年に京都で創業した西村友禅彫刻店。現在職人として工房を営む西村さんは、昭和42年に西村友喜知氏に師事し友禅彫刻のすべての技法を引継ぎ、伝統の友禅彫刻のみならず新しい商品開発にも積極的に取り組まれています。

小刀を使う「錐彫り」という技で、原板となる伊勢和紙に1つ1つ丁寧に柄を彫っていきます。

全神経を小刀の先に集中させているのがこちらにも伝わり、製作現場は緊張感に満ち溢れていました。

渋紙に突き彫り用の小刀を使用し彫って頂きました。

西村さんが日々使っている、様々な種類の小刀。この小刀もご自身で作っておられるそうです。

切れ味が鈍くなってきた小刀は砥石で丁寧に磨き上げ、刀部分がすり減るまで大事に使い続けます。

こちらが最終的に出来上がった原板。

柄名は、小さい四角がびっしりと並んだ「小紋縞」です。

②きもの誂え職人による革の型染め
原板をもとにシルクスクリーン型を製作し、次はお財布の革に型染めを施す工程に移ります。

京都にて1924年に創業した寺井商店の寺井昭人さんは、素材選びから製造工程の全てを手作りで一品一品仕上げる誂呉服を生業としています。その歴史の中で培った技術と感性を用い、きもの制作の技術をデザインに落とし込んだ革製品づくりをスタート。

きもの染色技法のひとつである絞り染めを筆頭に、型染め、シケ引き染めなどを革に施し、様々な表情を持つデザインの革製品を開発。常に新たな技術や素材を求め、その飽くなき探求心は尽きることがありません。

今回は、型を使って模様を染める型染めという染色技法を用い、日本の伝統的な和柄を1枚1枚手作業で染めてもらいました。

西村さんの原版を元に製作したシルクスクリーン型を使います。

型を置いた革の上にもち米で作った糊で防染し、ヘラを使ってムラにならないよう丁寧に糊を刷り込みます。

糊が完全に乾いたら、スプレーガンでムラが出ないよう全体を染めていきます。

単調な作業に見えますが、キレイにムラなく染めるのには実は長年培ってきた技術が必要です。また、革本来の質感を楽しんでもらうため染料仕上げにこだわっておられるのも寺井さんの魅力のひとつ。

革を1枚ずつ丁寧に水洗いして、防染糊を落としていきます。

糊が落ち、革の上に柄がクッキリと浮かび上がりました。
この後はしっかりと乾かし、染料が落ちにくいよう色止め加工を行い完了です。

染めあがった革がこちら。大きさの異なる小さな四角が縦の縞模様を成しています。

西村さんの手彫りの風合いのある、素朴で緻密な染め柄になりました。

革小物ブランド「sugata（すがた）」の「二つ折り財布｜収める 納まる」は、キャッシュレス決済が広まる現代に適した、新しいデザインの薄型財布です。特徴は、かさばりにくさと実用的な収納量を両立する、簡素で丈夫な設計。ベーシックな財布の設計を踏襲しつつも、新しい機能性を備えたデザインが高く評価され、2020年度グッドデザイン賞を受賞しています。

硬貨収納部の蓋は、まるでパズルのように、カード収納部の取り出し口にぴたりと収まります。また、一列に並んで収まる硬貨の下には、カードの束をしまうことができます。それぞれが互いに重ならないよう配置されているため、厚みが偏りません。実用的な収納量と、かさばりにくさを両立した新しい設計です。

浅い収納部に硬貨が一列に並びます。指先を財布の底まで伸ばす必要がないため、取り出しやすいことが特徴です。中身を一覧しやすいことや、取り出しやすいことは自ずと整理整頓にもつながります。最大15枚程度の硬貨が収まります。

硬貨収納部の下には、１０枚程度のカードが収まります。見た目以上の枚数が、すっきりとかさばらずに携帯できる設計です。収納部を2ヶ所設けているため、よく使うカードと、あまり使わないカードを分けてご使用いただくことができます。

財布を構成する４枚の型紙が、ジグソーパズルのように組み合うことで、廃棄される端革を減らします。素材を、余すことなく活用するための設計です。

素材の耐久性を活かすため、ポケットの中で擦り切れやすい中央の折り曲げ部分には、あらかじめ縫い目を入れないなどの工夫をしています。一般的な財布に比べて、少ない縫製で仕立てられていることが特徴です。ながくご使用いただくことを想定した、簡素で丈夫な設計です。

ナチュラルな色の革に４色の染料で染め上げました。

鉄紺(てつこん)｜わずかに緑味を帯びた濃い青色

赤銅色(しゃくどういろ)｜金属の赤銅のような暗い赤色

浅黄色(あさぎいろ)｜ごく薄い藍色

鬱金色（うこんいろ）｜少し赤みがかった黄色

＜本体素材＞牛革
＜サイズ＞(約)横114×縦90×厚み12mm：未収納時
＜重 さ＞(約)50ｇ
<仕 様>札入れ×1室、小銭入れ×1室、カード入れ×2室(仕切り無し)
<柄>1柄 小紋縞
＜色＞4色 鉄紺、赤銅色、浅黄色、鬱金色
紙箱入り
日本製

経年変化について
※柄は異なりますが、型染めをしたものの約1年半後の変化です。
ヌメ革の地の色(明るい肌色)は少し濃くなり、染めたところも含めて全体的に艶が増してきます。

2023年1月8日 プロジェクト終了・生産開始
2023年3月中旬頃から 順次郵送開始

原板製作

西村友禅彫刻店 / 西村武志
1953年生 京都市在住
1934年 西村友禅彫刻店は京友禅、誂友禅染工場、専属型彫として創業。
1967年 西村友喜知に師事。友禅彫刻の技法全てを引き継ぎ友禅彫刻業を営む。
振袖や留袖、訪問着などの着物、その他小物類などまで、染色法法や用途などにより数枚から数百枚の型紙を彫る事が必要とされる。それらは、一枚の型紙から染められてゆく。「ぬくもり」「安らぎ」「和の心」を与えてくれる友禅柄、古典模様、風景描写など、受け継いだ友禅彫刻の技法を駆使し、心を込めて彫り上げた「人の心に何かを語りかける型紙」を日常生活の中に届けられるよう、現在新たなアプローチでの商品制作、販売を目指す。

革染め

寺井商店 / 寺井昭人
1962年生 京都市在住
1987年 大正13年（1924年）より続く寺井商店（絞り呉服製造業）の三代目として絞り・友禅の技法を学び着物の制作に従事する。
2010年 革製品のオーダーメイドの受注生産を始める。
2018年 着物の染色技法を用いた革の染色を始め革素材としてオリジナルの革を作成し始める。
現在では着物の制作と共に着物の染色技法を用いた革の商品作りをしている。

デザイナー

sugata / 染谷 昌宏
埼玉県出身。
義肢装具士として義肢装具の製作に従事。
独立後、自身の革小物ブランド「sugata」を立ち上げる。
その他、革製品等のデザイン提供を手がける。

受賞歴
Japan Leather Award 2015レディースバッグ部門賞受賞
第12回TASKものづくり大賞優秀賞受賞
2020年度グッドデザイン賞受賞（https://www.g-mark.org/award/describe/49914）

実行者

OMIYA CONNECT / 金丸優季
長崎県出身
2006年京都外国語大学卒業後、近江屋株式会社へ入社。
2012年に新商品開発部へ異動となり、きものをはじめとする伝統工芸／技術を新たなマーケットで展開するべく日々活動している。