カミナリに撃たれてひらめいた！

北アルプスからエジプトまで、25年で世界中を渡り歩いた栗原隆一の物語

大学1回生の時、中国は内モンゴル自治区において、蒙古包（パオ）を製作した体験からアウトドアでの活動に熱中することになった。

さらに学生時代から、バックパッカーで世界中を旅するようになり、これまで30数ヵ国を渡り歩いてきた。

就職後もアウトドア熱は治まらず、社会人のアウトドアサークルを主宰するようになり、その頃から山にも興味を持ち始めた。

以来、現在でもそのサークル活を続け、500山を越す山にも登ってきた。

テント泊スタイルの登山を続けていたが、最も楽しみな時でもある食事の時間が悲劇となったことは今でも忘れることができない。

そんな悲劇を二度と繰り返すまいと誓い、このアウトドア用五徳『かるーい、ゴトうクん！』の開発に至るのである。

悲劇は突然訪れた！

テント泊山行において、食事の時間は、最も楽しく過ごせる時間でもあるはず！

さてさて、スープもそろそろ沸いてきたぞという時です。
『コツン』…

ぐらり…

『バシャー』
目の前で起きている光景が、信じられないとはこういう時なのでしょうか。
『・・・』何ら言葉は出てきません。

ビールを飲みつつ、さてこれから楽しもうというときに、一瞬にして悲劇が襲います。
今でも、あの言葉を失った瞬間を、忘れられません！

山行を重ねているうちに、そんな経験をしたことがあるという方も、多くいるのではないでしょうか？
それはひとえに、コンロの五徳が小さすぎるからです。
ソロ山行ならまだしも、グループ山行となれば、鍋やフライパンもそれなりの大きさになってきます。
しかし、五徳が小さいばかりに、誰かが支え役となったり、気を緩めることができない時間となってしまうのです。

そこで、ワタクシは考えました。
この調理から食事の時間を、みんながもっとゆっくりと楽しく過ごせる時間となるように！と。

『アウトドア用五徳』の開発です！
オートキャンプで使えるような五徳はありますが、いかんせんレジャーキャンプを前提に作られているためか、大きかったり、重かったり、コンパクト性に欠けたりするのです。

このアウトドア用五徳は、テント泊山行で使用することを目的とするため、まず軽いこと、携帯性に優れることを研究し、試作品の1号機からも改良を重ねて、3号機となる完成版の『かるーい、ゴトうクん！』が出来上がりました。

組み立て時間は約50秒。

素材はアルミ製で、重さは約242g。

コールマンのスポーツスターⅡが、ちょうど収まる大きさです。

3～4人用の鍋なら、十分な大きさ。調理の際も不安なし！
鍋を囲みながら食事も楽しめます！

収納は、20㎝×27㎝の巾着袋にすっぽり収まる大きさです！

シロートからのモノづくり

コロナ禍真っただ中の2年前の夏、私が所属している摂津市商工会から、経営に関する相談が受けられるとのことで、摂津ビジネスサポートセンターを紹介してもらった。

旅行業が全く振るわない期間であり、新たな経営基盤となるものはないかと考えていた頃である。

自分自身がこれまで続けてきたこと、経験してきたことで、誰かの役に立つこと、モノを考えてみてはどうかとのアドバイスを受け、山やアウトドアのことであれば、何かできることがあるとの思いに至る。

最初は、シュラフカバーの製作を考えて、動いていたが、どうもコストが合わないと言うことで、これはいったん保留とした。

次に考えたのが、テント泊登山で使用する五徳である。

大人数で行くと、それなりに調理用具も大きくなる。コンロに五徳はついているのだが、大きめの鍋やフライパンでは、不安定で、常に誰かが支えていなければならない。

鍋がずり落ちてしまうという、キャンプでの楽しいはずの食事の時間が、一瞬にして悲劇となった経験から、軽くて持ち運びができる、キャンプ用の五徳を作ろうと考えた。

製品作りは、まったくのシロートで、設計図もかけないため、頭に思う浮かぶカタチを、最初は段ボールで作ってみた。

段ボールでは、さすがにカタチが安定しない。
次には、100均で購入したカラーボードで、イメージするものを作ってみると言うところからのスタート。

摂津ビジネスサポートセンターで、アドバイスを受けながら、モノづくりへ挑戦していく！

私がカラーボードで作った模型から、摂津市商工会を通じて金属加工会社に試作品の製作を、お願いしてもらいます。
そして2022年3月、なんと！イメージ通りのモノが出来上がってきました！

試作品をキャンプやハイキングに持ち出し、使用テストを繰り返します。
安定性はバッチリ！鍋や鉄板が、ずり落ちる心配もなくなりました。
ただ、改善点は支柱を組む時に、外れやすいことでした。

円の台座と支柱との接続部分を変更した試作品の2号機が出来上がりました。
イメージしていた通りに出来上がってきたのですが、使ってみると、こちらも組み立てる時に支柱が外れることがあります。

自分自身が納得できないので、さらに改善することになります。

天板と支柱の組み合わせ部分を改良し、下の台座をなくしました。
そして円形から五角形へ。組み上がってからも支柱が抜けないように、支柱にワイヤーを通しました。
これで、支柱が紛失することも防げます。
試作品も3号機で納得できる製品となり、ついに『かるーい、ゴトうクん！』の完成です！
いや、まだまだ改善点が見つかれば、順次製品に反映していくつもりです！

【かるーい、ゴトうクん！仕様】
■素材：アルミ（A5052）
■組み立て時の大きさ：直径約20㎝、高さ15㎝
■収納：20㎝×27㎝の巾着袋に入ります
■重さ：約242g
※空焚き厳禁

このプロジェクトの実行者は？

栗原　隆一（くりはら　りゅういち）
1969年生まれ、兵庫県神戸市出身

大学時代より本格的にアウトドア活動を始め、海外旅行にも興味を持つようになる。

オーストラリアはケアンズでダイビングのライセンスを取得。
ケアンズからゴールドコーストまで、レンタカーのシエラで走った。ゴールドコーストからケアンズへと戻る途中には、洪水で大きく迂回することになる。
迂回距離400㎞と、スケールの違いを実感するとともに、延々と街のない中を走っている途中でついにガス欠。運よく通りかかった車に助けを求め、ガソリンを分けてもらったことは忘れられない。

ゼミ旅行で行ったイタリア・ローマでは、夜の街へと繰り出して、ホテルへ戻る途中でのこと。
道に迷っている風の人に声を掛けられ、行き先を聞けば我々が滞在していたホテルの近くだったので、案内すると、感謝のしるしにビールをおごるという。
薄暗い路地へと入り、たどり着いたバーで、ビールにワインと調子よく飲んで、おまけにランバダも踊ってしまう！
が、気づくのが遅かった！そのぼったくりバーから、走って逃げかえったことも今では良き想い出…か？

卒業旅行で訪れたネパールのチトワン国立公園では、サイに追い回されるという貴重な体験もした！

大学卒業後は、金融機関に就職するも、アウトドア熱はますます高まり、最初のボーナスで、カナディアンカヌーキットを購入。
3ヶ月ほどかけて組み上げたカヌーは『カトリーヌ号』を名付けられ、海、川、湖へと漕ぎ出した。
秋も深まる寒い頃に、会社の先輩女子2名を載せて、漕ぎ出したとたんに転覆したことは、今だから笑える話になるだろうか。

アウトドアの楽しさを、もっと多くの人に知ってもらおうとの思いで、会社の後輩と二人で社会人アウトドアサークルを立ち上げる。

サークル活動のうち、次第にハイキング、登山、テント泊縦走と山の企画も増えてきて、今年28年目を迎える『アウトドアサークルPAO』は、今でも活動を続ける。

サラリーマンをしながら続けていた、アウトドア活動を趣味から仕事に出来ないかと考え、勢いだけで脱サラ！
翌年には免許も取得して、アウトドアを得意とした旅行会社『PAOプラス』を設立。
現在も経営を続ける。

山と温泉と酒を愛し、キャンプでは宴会が一番の楽しみでもある。
そんなことで、楽しく騒ぎすぎて、キャンプ場でもテント場でも山小屋でも民宿でさえも、『うるさい！静かにしろ！』と怒られることは数知れず。

そんなワタクシが、取り組んだ、今回のアウトドア用五徳『かるーい、ゴトうクん！』ですから、テント泊での宴会も楽しめること間違いなしです！

ぜひ、応援してください！