日光を浴びよう！折り畳める麦わら帽子を目指して

人間社会がどうあっても夏がやってきます。

今日は、麦わら帽子のお話をさせてください。おっと、はじめまして。私たちは、野良着メーカーのSAGYOです。日本の野良着を再考し、風景をつくるような作業着を開発製造し販売までやっています。

今回は太和紙真田 労帽（ふとわしさなだ ろうぼう）という和紙でつくった現代の麦わら帽子をつくろうとしています。ただの麦わら帽子ではありません、折り畳める作業用の麦わら帽子です。素材は麦ではなく和紙にしました。

持ち運びやすく蒸れない帽子を

そもそも暑い時期の作業用の帽子といえばもっぱらメッシュ素材のキャップなどでしょう。しかし、ツバは前にしかありません、気がついたら首の後ろが真っ赤になってしまった、という経験がある人は多いのではないでしょうか。

直射日光を長時間浴びると疲労も増します。特に畑のような日陰がないフィールドで仕事をするなら360度全方位の日差しを防ぎたいところ。さらに蒸れにくいことが大事です。そんな中で、麦わら帽子は高温多湿の日本に最も適した帽子の一つです。

これまでSAGYOで手掛けた麦素材の麦わら帽は、炎天下の屋外作業などに威力を発揮し一定の成果を得ておりました。

ところが、折りたためないのが難点でありました。

麦でつくった麦わら帽は形が壊れるため折り畳めません。かさ張るので、遠出する際に少々不便です。最近の野良仕事は、家から離れた貸し農園だったり都市と田舎の二拠点居住地の草刈りだったりと移動が多くなっています。

あと、メーカー側としては発送時に送料が高くなるのも悩みでした。SAGYOがつくるのは、人前に堂々と出られる作業着です。コストも大事です。そこで、麦わら帽子を共同開発している広島の藤井製帽さんと検討した結果、和紙でつくれば折り畳めるようになるのでは？ということで、和紙で製造することにしてみたのです。

言うは簡単なのですが、折り畳めるけど、形を保てる弾力を出すのが難しい。また、通気性の良い素材の和紙でも、目を細かくしすぎると蒸れるし重くなります。自然素材でも目を細かくした仕様だと、作業などで運動して発汗、発熱が激しくなると蒸れやすくなります。

そこで、より蒸れにくい疎密さの編みにして加工時にフィラメントを入れハリを出し、さらに一般的な形よりもトップを高くしました。これにより、かぶったときの頭の上と帽子の天井にすき間を空け、更に風の通りを良くしています。

麦わら帽子と言えば名作映画によく出てくるように風で飛ぶイメージもありませんか？そこも対策しました。

まず、頭のサイズを気にせず着用できるように、内側のリボンの中にサイズ調節紐を仕込みました。リボンのおかげで気兼ねなく作業に使えるラフさと、凛とした仕事着感が出せたように思います（主観ですが）。

もう一つ、帽子を頭に固定するために、古来の笠紐を参照した和紙平紐を縫い付けています。常に古来の和服を参照するのがSAGYOらしさです。

【こちらはリボンに仕込んだ調節紐】

【和紙平紐、古来の笠の紐を参考にしました】

内側のリボンのみ手洗い可能ですが、出来れば汗止めとして手ぬぐいや作業頭巾と合わせて着用下さい。

木陰をつくる-屋外に出るため道具

農作業以外でも、これからの時期に人混みを避けつつ屋外を散歩するのはビタミンD生成の観点からもいいかと思います（常時人と2ｍ以上の距離が取れる環境下）。

また、近年の研究で日光と近視の関係も明らかになっていて※1、台湾では小学校の屋外活動を増やす取り組みをした結果、近視の割合が大きく減少したという結果が出ているようです。逆に言えば、日光を浴びないことが近視リスクになっていると言えます。

とはいえ直射日光を浴びると強すぎるので屋外の日陰程度が理想です。屋内の窓際でも良さそうと思いきやガラスで視力維持に必要な紫の可視光線※2がカットされてしまうので、やはり屋外に出るのが大事です。

麦わら帽は身の回りに木陰を作る道具でもあります。何か作業がなくても屋外散歩も立派な野良仕事だと思って活用いただけると嬉しいです。

※1 "Outdoor activity reduces the prevalence of myopia in children."
（論文タイトル「屋外活動は子供の近視有病率を減少させる」 筆者訳）
Ophtalmology.2008 Aug；115（8）：1279-85
※2 ”Violet Light Exposure Can Be a Preventive Strategy Against Myopia Progression”
（論文タイトル「紫の可視光線の照射は近視の進行を防ぐ予防策になりうる」 筆者訳）
EBioMedicine. 2017 Feb;15:210-219.

着用イメージ

ご覧の通り、かなりツバが広く、てっぺんが高いです。頭の上に空間をつくって蒸れを防ぐ形です。

日本でつくれるものを増やす

さて、どんな風に製造しているかご紹介します。完成品だけではなく製造過程も重要だとSAGYOでは考えています。何かあったときに頼りになるのは身近なメーカーです。

麦わら帽子を製造する工場は減少していて、素材となる麦のブレードをつくれる工場はなくなってしまっています。国産の麦わら帽はあってもその素材は国内製造ではないものが多いようです。

この労帽は、素材も国内製造に徹しました。

静岡で製糸・色と糊付け→岡山でブレード状に加工→広島で縫製加工と全工程を国内で完結させています。

SAGYOは、広く野良仕事をする人のためのメーカーです。日本のものづくりに関しては、最終工程だけを国内で完成させてなんとか国産を名乗るぐらいがいっぱいいっぱいになりつつあります。

SAGYOの場合は、綿花栽培までは国産にはできていないので完璧とはいきませんが、糸の紡績からの製造工程に関しては全工程国内です。できる限り国内でつくったもので、野良仕事をできるようにしたいと考えて取り組んでいます。

国産の農産物を、国内製造の作業着を着て育てる、そのための品物の選択肢をつくる。もし、購入者の方が農業に携わっていなくても、回り回って国内でつくれるものの多様性の増進に参加できる。これが本プロジェクトのもう一つの特徴です。

やっぱり、全然作れなくなると何かあったときに困りますからね。
試作品ができたばっかりなので全身の着用イメージがまだありません。が、他の労帽の様子をご紹介します。

【こちらは旧作の麦素材の労帽】
SAGYOの衣服は、和服のつくりをベースにしています。今回の帽子も麦わら帽のような自然の風景になじむ素材でつくれたのではないかと思っている次第です。

仕様

＜サイズ＞男女兼用フリー（頭囲 55-60cm）直径 約45cm
＜素材＞本体：指定外繊維(紙)86％、ポリエステル(ブレードの耳に当たる部分)8％、ポリプロピレン(ブレードに混ぜるフィラメント)6％

リボン：レーヨン100％

＜取扱注意＞
ブレードにはコーティングをしている為、汗程度では形状変化することはありませんが、原則水に濡れることは厳禁です。
やむなく降雨等で帽子がぬれてしまった場合、形を整えて、陰干しにて時間をかけて乾かしてください。ドライヤーなどで無理に乾燥させないでください。

スケジュール

4月15日公開
5月8日終了
5月15日から順次発送

リターン

先着10名 10％OFF 労帽1つセット
先着20名 7％OFF 労帽1つセット
先着10名 10％OFF 労帽と頭巾セット
先着10名 10％OFF 労帽と首巻と上着中着もんぺ5点セット

実行者紹介

SAGYOは2015年に伊藤洋志、岩崎恵子、長山武史の3名でスタートした野良着メーカー。それぞれ農業現場テスト担当、生産担当、オンラインシステム担当と異なる担当分野を持ち別拠点で連携しながら、プロダクトから流通までを一貫して研究開発している。インディーズメーカーとして小資本で製造と流通を賄う手法の開発も手掛けている。
本文章の担当は、伊藤洋志です。SAGYO以外には、遊撃的農家や全国床張り協会など農業やDIYサポート事業と著作業に従事しています。
主な著作は「ナリワイをつくる」（単行本東京書籍/文庫版ちくま文庫）など。