2本のペンをやさしく巻いて包みます。

デスクに広げれば名刺やスマホ置きに。

打合せや出張先ではマウスパッドに。

私たちは明治大学理工学部建築学科の建築・アーバンデザイン研究室の学生です。デザインを通して、都市や地域の問題を多角的な視点から考え、解決する研究と実践に取り組んでいます。

世の中には価値が見過ごされ、理不尽に始末されるものが多く存在することを知りました。

「シカと」プロジェクトは、世の中で「シカト」されているものにデザインの力で価値を与え、地域や人々のために役立てるものです。1％しか活用されていない害獣として駆除された鹿の皮を「いただきます」の思いを込めて活用し、鹿と共に生きる地域づくりを目指します。

鹿革の特長は、布のような柔らかさ・軽さ・肌触りの良さです。

風呂敷は包む、巻く、畳むといった所作を通してものを守ります。鹿革と風呂敷の特長を生かし、ペンを包む正方形の一枚革をデザインしました。

植物成分でなめした鹿革は、使い続けることで色味や艶が変化し、豊かな表情を醸し出します。

左は、新品の鹿革、右は２ヶ月間使用した鹿革です。

（鹿革は使い込むほどに、よく触れる部分が濃い茶色に変色します。また、水に濡れても跡が残ります。）

人の活動領域の拡大により鹿は農作物や森を荒らす厄介者になってしまいました。

皮や肉の活用方法が確立されていないため、鹿革産業は成り立っていません。

革職人でなくても作ることができる、シンプルなデザインです。それは、地元の小さな子どもをもつお母さん方に製作をお願いするためです。小さな子どもをもつお母さん方の働き口として少しでも力になればと思います。

そんなデザインを通して、地域と学生が取り組めるプロダクトで地域課題の解決に取り組みます。

【素材・色】

本体：鹿革・茶色　

ロゴ：牛革・ヌメ色

【サイズ】

本体：幅約15cm×高さ約15cm×厚み約1mm

ロゴ：幅2約cm×高さ約2cm×厚さ約1mm

※本製品は天然皮革素材を使用しているため色ムラ、キズ、シワ、血筋等が見られます。天然素材ならではの個性としてご理解ください。

「シカト」の語源は、花札の十月の絵柄である「鹿の十（しかのとお）」に由来しています。そこでは、鹿がそっぽを向いていることから、無視をする意味で使われるようになりました。我々のロゴは、鹿の象形文字をモチーフに、角の一部を＋マークにすることで「シカト」されてきた鹿と共に暮らす思いを込めました。

このプロジェクトは、阿智村、根羽村、平谷村と連携をして活動しています。ヘブンスそのはらの花桃や星空の観光で有名な阿智村ですが、鹿や熊、猿といった害獣問題を抱えています。根羽村は、木材の資源が豊富で地域内の連携を作り、都市部へ発展させる活動をしてます。平谷村は、90%を占める森林の豊富な自然資源を利用し、総合的な観光立村を目指しています。「シカトされている地元資源の価値を多くの人に知ってほしい」という思いから、三村の方々と共に活動しています。

「南信州」新聞社 2023年4月22日掲載

このプロジェクトを実行するために、革製品の製作などに関して、株式会社革道楽の木下英幸さんにご協力していただきました。木下さんは、本業である革職人としての仕事だけでなく、地元の保育園での授業や市田柿のブランディング等、積極的な地域づくり活動をしています。

研究室は、これまでイベントの開催や空き家・空き店舗の活用を考えるワークショップ、さらにはまちの魅力を伝えるプロダクトの作成など多角的なアプローチで課題解決に取り組んできました。それぞれの地方にあるひと・もの・空間こそが資源であり、ひと・もの・空間で地方と都市空間をつなぐためにどのようなことができるのか考え活動しています。

※ 鹿革ペンホルダーの販売、関連法令の遵守、カスタマー窓口、Makuake品質基準への対応は、合同会社FTS Urban Designが主体となり、明治大学建築・アーバンデザイン研究室の協力を得て行います。