ふつう柑橘のリキュールは、穀類が原料の原酒に果汁で味つけされているもの。一方、この山神果樹薬草園｢柑橘リキュール柚子25％｣は、発酵原液から柚子でつくり、単式蒸留して原酒に。 だから「丸ごと柚子のクラフトリキュール」なのです。

丸ごとの柚子を味わうために、ぜひ一度はロックで召し上がってください。お酒に強い方はストレートをおすすめします。

口に含むと軽い甘みがあり、次の瞬間、柚子果汁のギュッとした酸味が、さらに原酒のほのかな苦みが味を引き締めます。3つの風味はバランスよく一体となり、喉越しはすっきり。柚子のさわやかさが残ります。

後味のよさを決めているのは香りでもあります。飲んだ後、鼻腔をフワっと満たして抜けていく香気はたまりません。

香気のためには、原料だけでなく蒸留法もポイントです。素材の風味が残る単式蒸留で、原酒に香気成分を溶け込ませました。

私たちの原酒はアルコール度数約55％。そこに｢丸ごと皮削り®国産柚子のしぼり酢｣と｢柑橘コーディアル｣をブレンドし、味と香りを整えたのが、皆さんにお届けしようとしている、山神果樹薬草園「柑橘リキュール柚子25％」です。

山神果樹薬草園「丸ごと皮削り®国産柚子のしぼり酢」：柚子の皮を削り取った後に搾汁した、100%柚子のストレート果汁。

山神果樹薬草園「柑橘コーディアル」：搾汁後の柚子を氷砂糖とともに漬け込んだ後、じっくりと圧をかけて搾った、柚子の濃縮シロップ。

一般的にアルコールは蒸留が進むにつれて度数が変わり、香味も変化します。１回目の蒸留(初留)で得られる原酒は「ヘッド」。アルコールの匂いが強く、素材感はありません。

それが中留の「ハート」になると素材の香味が感じられるようになり、最後の後留「テール」ではアルコールの匂いも素材の香味も、ほとんど感じられなくなります。

ふつう原酒に用いられるのはハートだけ。ところが、私たちの原酒には、ヘッドにも柚子らしい香気がふんだんに含まれています。そこで、ヘッドとハートの配合を調整し、柚子の豊かな香気を引き出すことができました。

ところで山神果樹薬草園とは
山神果樹薬草園は、東京都墨田区にある松山油脂がつくりました。徳島県徳島市から車で約30分の県内唯一の村、佐那河内村(さなごうちそん)にあります。

松山油脂は、石けんやスキンケア製品のメーカーです。本社のある東京都墨田区と、山梨県富士河口湖町に工場を構えています。そんな松山油脂が、なぜ遠く離れた徳島県に来たのか。それは柚子のためです。

松山油脂と柚子
松山油脂の製品の代表格は、国産柚子精油を配合した「柚子（ゆず）ボディローション」という身体用の乳液です。2005年の発売以来、17年もの間ご愛用者を増やしています。しかし、近年では柚子をはじめとする和柑橘への注目度や需要が高まり、柚子精油が今後も安定的に供給されるか、先行きが不透明になってきました。

徳島県との接点
そんな折、私たちは全国の地方自治体で6次産業化の指導をされている方に巡り会いました。その方を通して徳島県との接点が生まれ、佐那河内村と出会いました。徳島県は柚子やすだちなど和柑橘の名産地。村内でも栽培がさかんです。

素材にまでさかのぼるモノづくり
化粧品類は通常、メーカーから買いつけた原料を混合・合成してつくられます。しかし、私たちは、単に原料を買いつけるだけでなく、植物の素材にまでさかのぼり、栽培から加工、品質保証まで、自分たちで一貫して取り組みたいと思ってきました。

ここにも農園をつくりたい
今では、富士河口湖工場のお隣、鳴沢村に農園をつくり、収穫したハーブを製品の原料にしています。

佐那河内村と出会い、「このような環境でまた農園をつくって、柚子精油を自家製にできたら」という思いが私たちのなかに芽生えたのは、ごく自然なことでした。

「化学工場が来る」という不安
ところが、地元の方には、「工場が来る」｢川が汚れる｣「自然が壊される」という不安があったようです。

魚が泳げる排水しか出さない
そこで、地域を回り、説明会を開きました。柚子やすだちを育てたいこと、果実を精油やジュースの原料にしたいこと、原料は地元・近隣からも買い入れたいこと、大きな工場ではなく、小規模な搾汁充填室があれば十分なこと、高度な排水処理設備も備えて魚が泳げるレベルの排水しか出さないことなど、こと細かに説明しました。そして、ようやくご理解を得て、山神果樹薬草園をつくることができたのです。

山神果樹薬草園ってこんなところ
柚子やすだちなど和柑橘の農園と、精油やジュースの搾汁充填室、ジャムなどの調理室、交流施設があります。今ではアルコールの発酵室・蒸留設備が加わりました。

農園内にはコンポストハウスもあり、どうしても処理しきれない最終残渣に、手入れの行き届かない林から伐り出してきた竹でつくったパウダーと、半熟堆肥化したシイタケ菌床を混ぜ込んで、有機菌床堆肥にしています。

散策ができる農園
山神果樹薬草園にはファクトリーショップと、季節限定でオープンするカフェスペースもあります。農園は自由に散策可能。四季の草花や木の葉の彩り、里山の景色を楽しみながら、ぐるっと回ると約30分。オープンガーデンを開催することもありますので、どうぞお越しください。

これまでにない製法で
柚子を丸ごと使いきりたい
さて、話を精油に戻しましょう。柚子などの柑橘精油は、ふつうは外皮ごとギュッと押しつぶして果汁を搾った後、外皮を水蒸気蒸留して抽出します。

一方、私たちは、山神果樹薬草園をつくるにあたり、これまでにない製法で、柚子を丸ごと使い、際立った個性がある製品をつくりたいと考えました。

イタリアに行きはしたけれど
そこで出向いたのが柑橘類の一大産地、イタリアのカラブリア州です。精油の生産量が多いことでも知られています。

そこで見たのが、「ペラトリーチェ」という日本ではほとんど見かけない方式でした。金属製の爪で外皮だけを強く掻き取りながら、柑橘の表面のボコボコとした油胞をつぶして精油を搾り取ります。

ただし、ペラトリーチェでは一度に膨大な原料柑橘を使います。山神果樹薬草園の規模にはとても見合いません。一時はあきらめるほかないと思いました。

交渉のゆくえ
しかし、「これまでにない製法で、これまでにない製品を」という目標を達成するためには、私たちにはどうしても、ペラトリーチェが必要なのです。そこでイタリアのメーカーに何度も何度も交渉しました。ここで受け入れてもらえなければ、山神果樹薬草園は終わってしまいます。

胃が痛くなるような、粘りに粘った1年8か月。やっと小規模の機械をつくってもらう承諾が得られました。

丸ごと皮削り®って何？
小規模で独自のカスタマイズをしたペラトリーチェによる精油の抽出は、国内では希少です。私たちはこの抽出法に「丸ごと皮削り®製法」という名前をつけました。

果汁との接触による変質を発生させることなく、果皮に含まれる精油を得られるのが一番の特長です。柑橘のさわやかさとその果実の個性、例えば柚子なら凝縮した酸味とほろ苦さが感じられる精油を、すだちなら和柑橘のさわやかさとスパイシーさをあわせもつ香りの精油を抽出できます。

丸ごと皮削り®から
皮なし圧搾

丸ごと皮削り®された原料柚子は、内皮や繊維質に覆われた白い球になります。それを押しつぶすと、外皮にある苦みやえぐみのもと、フラボノイドやリモノイドをほとんど含まない果汁を得ることができます。

これが皮なし圧搾果汁です。山神果樹薬草園の皮なし圧搾果汁は何も足さず、ろ過もしていないので繊維質を含んでいて、口当たりが濃厚です。

飲みきる・食べきる・使いきる

丸ごと皮削り®製法の導入により、フレッシュな精油と同時に、果汁も得られるようになりました。私たちは、原料柚子を無駄にすることなく、｢飲みきる・食べきる・使いきる｣ことを目指せるようになったのです。

苦戦に次ぐ苦戦
柚子は黄色く色づいた時、最もよく香ります。反面、実がやわらかくなるため、外皮だけを削るのがとても難しくなるのです。専門家からも「柚子は丸ごと皮削り®に向きませんよ」と心配されてしまいました。

事実、精油の抽出条件の設定にはかなり苦戦しました。どれくらいの熟度、鮮度であれば爪が外皮だけを削り取れるのか、爪が回る速度と時間。これらを組み合わせれば条件は無数になります。当初の精油の収率は散々な結果で、果汁と搾汁後の柚子だけが、どんどんたまっていきました。

計画の頓挫と挫折
果汁は「丸ごと皮削り®国産柚子のしぼり酢」「丸ごと皮削り®国産柚子と伊予柑のジュース」として、早くから製品化が決まっていました。

一方、搾汁後の柚子の使いみちはなかなか決まりません。「飲みきる・食べきる・使いきる」という計画は一時頓挫し、産業廃棄物として費用を払って引き取ってもらうことが続きました。精油はまともに抽出できず、廃棄物まで出す。私たちは大きな挫折を味わいました。

おいしさを捨てていないか
そんなある日、あるスタッフが声を上げました。「搾汁後の柚子の繊維質や内皮、袋には、まだまだ柚子の香味が残っている。もったいない。原料になるのではないか」

確かに、搾汁後の柚子はまだ香りも水気もたっぷり含んでいます。何か方法がありそうでした。そんな時、「果物は搾汁後であっても、うまく発酵させれば発酵原液ができ、蒸留すれば原酒ができる可能性がある」と教えてくれる人がありました。

背中を押してもらった
とはいえ、本当に私たちにできるのか、悩みました。精油の収率が上がらず、とにかくみんなヘタっていたのです。

そんな時に出会ったのが木村太佑さんです。木村さんはオーガニックワインインポーターで、フランスの国家ソムリエでもあります。私たちの話を聞いてくださった後、「とてもおもしろい！ やってみる価値は十分にありますよ」と背中を押してくださいました。その言葉は、私たちが顔を上げて前を向くきっかけにもなりました。

申請から認可までに11か月
とはいえ、お酒の製造には酒類製造免許が必要です。まずは徳島税務署に行き、申請書類を提出することから始めました。

ちなみに、初めて税務署を訪ねたのが2021年7月｡最終的にリキュールの製造免許を取得できたのは、それから11か月後の2022年6月でした｡

強力な援軍
酒類の製造を始めるのに最も困るのは、試作であっても免許が必要なことです。ゼロから始める私たちに力を貸してくれたのは、徳島県立工業技術センターでした。

センターは、県内に事業所を持つ企業の活動への協力もしている機関です。山神果樹薬草園も、竣工までの期間に貸研究室をお借りしたり、和柑橘について教えていただいたりと、深いご縁がありました。酒類の試験醸造免許もおもちです。そこで相談をもちかけたところ、協力を快諾してくださいました。

え？ 柑橘は発酵しない？
特に力を貸してくださったのは同センターの岡久修己(おかひさなおき)さん。発酵原液に必要な酵母を開発されている、お酒のスペシャリストです。

ところが、岡久さんは「果物のなかでも柑橘は例外で、外皮に阻害成分が含まれているせいか、ふつうは発酵がうまく進まないんです」とおっしゃるのです。ショックでした。「話が違うよー」でした。

けれど、私たちはチャレンジしたかったのです。それを伝えたところ、岡久さんは思いを汲んで、｢それなら挑戦してみましょう｣と、発酵原液の蒸留やアルコールの分析法まで、ノウハウをすべて伝授してくださいました。

スペシャリストも驚いた
発酵原液をつくるために準備したのは、搾汁後の柚子と酵母、きび砂糖です。これらを混ぜ、毎日攪拌して観察すると、日に日にプクプクと泡が立つようになりました。発酵です。柑橘が発酵したのです。

すんなり発酵が始まったことに、岡久さんも大変驚かれ、「新たな知見」とおっしゃいました。これはおそらく丸ごと皮削り®で、外皮をほぼ削ったことで、発酵の阻害成分までが取り除かれたのではないか、と私たちは推測しています。

製造免許も無事取得
設備がすべて揃った2022年6月、無事にリキュール製造の認可が下りました。これまで重ねてきた経験を、とうとう発揮する時がきたのです。全員がうれしさと大きな不安、両方を抱えて作業に入りました。

発酵原液から原酒へ
幸運なことに、発酵は実機でも滞りなく進みました。次の問題は蒸留です。使うのは単式蒸留器｡アルコール分以外の成分も溶け込むため、素材である柚子の香味を生かすことができます｡

一方、加熱温度、時間、攪拌スピード｡これらの条件を整えないと、素材の持ち味が生きた原酒になりません。初めての蒸留、緊張して加熱を始めました。

じっと見つめた30分
アルコールは沸点が低いので、加熱するとさかんに気化します。その蒸気を集めて冷やし、液体にすると原酒になるのです。

初めての蒸留を開始し、ホースの先をじっと見つめることおよそ30分。ようやくポタポタと滴ってくるものがありました。原酒です。蒸留成功の瞬間です。滴りつづける原酒。うれしさが弾けて、私たちはみんな、両手を挙げて大喜びしました。

まずは「6％」
私たちが最初につくった原酒のアルコール度数は40％。まずはそれを6％まで落とした｢柑橘リキュール柚子6％｣をつくりました。原酒に｢丸ごと皮削り®国産柚子のしぼり酢｣と｢柑橘コーディアル｣をブレンドし、丸ごと皮削り®製法の柚子精油を加え、味と香りを整えたリキュールです。

順風満帆のはずが
「6％」は順調に進みました。お酒があまり強くない人でも飲めてアレンジもきくよう、何度も試作し、試飲してレシピを決めました。それなのに、それなのに、です。

まさかのちゃぶ台返し
発売直前、最後の最後の試飲会で、｢甘過ぎないか？」という声があがったのです。「こんなに甘くては食事の邪魔になるよなぁ｣と言うのです｡「なんでこんなに甘いの？」

理由は単純、砂糖です｡アルコール度数6％なら、ふだんお酒を飲まれない方にもおすすめできるのではないか、だとしたら甘いほうがよい、と考えた結果でした。

「これじゃ甘くて飲む気が起こらないなぁ…やり直さない？」。「え？ このタイミングで…？」。誰もが心のなかでつぶやいたことと思います。

発売を延期してでも
すぐに砂糖を抜去したレシピの開発に取り組むよう、てきぱきとした指示が飛びました。ボトルのラベルもつくり直しです。

リキュールの製造担当者からは｢発酵原液の製造から始めるので、どうしても発売日に間に合わない｣という悲鳴が上がります。この甘さのままでいくか、イチから味を見直すか。シンプルに、おいしいと言えるのはどちらなのか。答えは明白でした。

発売日を当初予定の9月12日から10月12日へと1か月延期し、柚子らしいおいしさがある新たなレシピの開発を、急ピッチかつ慎重に進めることとなりました｡

どのシーンでも飲みやすい「6％」
突然の出来事を乗り越え、晴れて発売に至った「柑橘リキュール柚子6％」。2022年10月12日、一般発売しました。「柑橘リキュール柚子25％」と組み合わせ、リターンとしてご用意しています。ご興味が湧きましたら、ぜひお選びください。

美味く深く香る「25％」
「柑橘リキュール柚子6％」を経たからこそ、「柑橘リキュール柚子25％」があります。しかし、「美味く深く香る」のは断然「25％」です。アルコール約55％の原酒に柚子の香味が溶け込んでいます。

食前や食中に召し上がるなら、炭酸割りがおすすめです。柚子が弾けるように香りますが、糖度が下がるので、味覚の邪魔をしません。炭酸水7対リキュール3を目安に、お酒が強い方ならリキュールの割合を4～5まで増やすと、お好みに合うと思います。

ロックの時は、グラスに大きめの氷を8分目くらいまで入れ、リキュールをグラスの3分の1ほど注いで、氷を溶かしながら召し上がってください。

これからの季節はお湯割りもおいしく召し上がれると思います。時には「柑橘コーディアル」を垂らして、少し甘めにして召し上がるのはいかがでしょうか。コーディアルも、リキュールと組み合わせてリターンとしてご用意しています。

ここまで長文を読んでいただき、本当にありがとうございました。 心からお礼申し上げます。 これをご縁に山神果樹薬草園を身近に感じていただくことができたら幸いです。 ご声援どうぞよろしくお願いします。

山神果樹薬草園「柑橘リキュール 柚子25％」はMakuakeプロジェクト終了後、弊社製品取扱店、弊社直営店・オンラインストアにて一般販売いたします。